ビルの省エネ指南書(13)

ビルの省エネ指南書(13)

空調機のチューニングポイント〔其の3〕

中間期(2)

5、加湿冷房

総合図書館では中間期の省エネ対策として加湿を冷房に利用していた。

空気が乾燥している中間期にスプレー式の加湿をおこなうと水の蒸発効率が高く、給気温度が5℃近く下がる日もあったほどだ。

窓を開けることが出来ないビルなので外気だけでは冷房できず、空調機にも外気冷房用のバイパスがないため、冷熱も併用して冷房をおこなっていたが、加湿冷房を行うようになってからは中間期での冷熱の使用量を大幅に減らすことができた。

暖房時の加湿ならば湿度の設定が可能で、図書館内が40%以上の湿度になるよう設定しておけばよいが、冷房時は制御的に加湿ができないため、手動で加湿用の加圧ポンプを運転していた。中間期のように外気が乾燥しているのに加湿ができなければ、建物内の湿度を40%以上に維持することはできないが、水の気化熱を利用した冷房ならば湿度維持も同時にできるのだから一石二鳥である。

6、加圧ポンプ

総合図書館の加湿制御は加湿制御用のリレーがONになり、加圧ポンプのスイッチが入になっていなければ加圧ポンプが動かない構造である。中間期にも加湿するには、加湿制御用のリレーを強制的にON状態にすればよい、あとは加圧ポンプのスイッチを手動で入り切りすればよいのだ。しかし手動ではスイッチの切り忘れの可能性があるので十分に注意しなければならない。加湿冷房のつもりが、空調機が停止している時に水の垂れ流しとなっていては意味がない。このためにも加湿の自動制御は暖房時だけではなく冷房時もできるようにするべきであろう。

7、外気量

加湿冷房の調整ポイントは外気導入量の調整である。外気だけでの冷房ならばあまり考えなくてもよいが、冷熱との併用となればいろいろな条件も考慮しなければならない。

①       外気だけで冷房

②       外気と加湿を併用

③       外気と加湿と冷熱を併用

①の外気だけで冷房が可能ならば、外気導入量が多くなるようにダンパーを調整しておけばよいので簡単だ。

②の加湿も併用するとなれば外気湿度とスプレー量を考えなければならない。外気湿度が高いのにスプレー量が多くては、蒸発効率が低下して水の無駄となる。

スプレー量の調整は複数台の加圧ポンプがあれば運転台数で調整が可能だが、1台ならばノズルを減らして調整しなければならない。この方法については何れ冬季の加湿で詳しく述べるつもりである。

難しいのは③である。冷熱も併用するということは空調機の設定は外気冷房ではなく冷房になっているはずだ。当然に還気もあるが、還気は外気よりも温度も絶対湿度も高いはずであり、このような還気ではスプレーの蒸発効率が悪くなる。還気が多くて外気冷房効果や加湿冷房効果も悪くなるのならば、還気ダンパーを絞りぎみにして外気量を増やしたほうがよいが、これだけでは建物内の気圧が高くなりすぎるので、それに見合った自然排気も考えなければならない。

8、風除室

自然排気が簡単に行える場所は出入口であり、ドアが開けば必ず排気する場所である。外気侵入防止の風除室があれば二重ドアであるが、この内側のドアを開放停止状態にしておけば、これだけでも空気が流出しやすくなるだろう。

中間期に二重ドアの必要はなく、むしろ空気を積極的に逃がす場所として利用したい。