ビルの省エネ指南書(17)

ビルの省エネ指南書(17)

  窓のチューニングポイント〔其の1

窓とブラインド

  外気温度が33.2℃と高い日に温度測定を行ってみた。天候は晴れたり曇ったりで、常時日射があったわけではない。

センサーは正確性と感度を重視して熱電対センサーを使うことにした。センサー部分が細くて長いのでブラインドの隙間に入りやすく、ブラインド効果が正確に分かるだろう。

1、ブラインド室内側の温度を測定

最初はブラインドが閉まっている状態から測定を開始することにする。

 写真-1 ブラインドを閉めた室内側温度

写真-1は平成238811時台の温度である。28.9℃で少し高めの温度であるが、ブラインドが閉まっているといっても写真のような隙間が多い状態であり、ブラインドの直ぐ手前であることと、部屋の隅であるため冷気が届き難いことも影響して温度が高くなっているようだ。温度よりも温度差を調べることが目的だが、同じように測定しても測定場所や室内温度と気流、屋外条件によっては違う結果になるだろう。

2、ブラインドと窓ガラスの間で測定

先ほどの状態のままで温度センサーをブラインドの隙間から窓ガラス側に入れて、窓ガラスとブラインドの間の温度を測定する。

窓が南向きのため、センサーが直射日光の影響を受けないように、窓枠の陰になる位置にサンサーがくるようにして測定した結果、温度が32.1℃となっており、ブラインド室内側と比べると3.2℃高い温度である。

  写真-2 ブラインドを閉めた裏側で測定

前回測定した時は天候が曇りで外気温度が30.7℃であった。その時は2.7℃の差であったが、外気温度が高くなるほど窓とブラインド間の空気層の温度が高くなるので、室内側との温度差が大きくなっている。

 3、ブラインドを水平にして室内側で測定

今度はブラインドのスラット(slat)を水平にして、十分に時間をとってから測定した。スラットの間から空気が流れ、熱の移動が終わるのを待ってから温度を測定するためである。

  写真-3 ブラインド水平での室内側温度

  写真-3の表示が見難いが28.9℃である。

意外にもブラインドを閉めて測定した結果と同じであった。窓側の熱が室内側へ漏れているはずだが、漏れた熱は室内側の冷房に吸収されて温度が上がるまでにはなっていない。

4、ブラインドを水平にして窓側で測定

  次に、スラットを水平にした状態のままでブラインドと窓ガラスの間の温度を測定した。

水平になったスラットの間からセンサーを入れ、スラットを閉めて測定した時と同じく、窓枠の陰にセンサーがくるようにした。

  写真-4 ブラインドを水平にして窓側で測定

  温度が31.5℃となっておりブラインド室内側と比べると2.6℃高い温度である。スラットを閉めていた時が3.2℃高かったので0.6℃低くなっている。外の景色が完全に見える状態なのに2.6℃の差を保っていることに注目したい。スラットを閉めたほうが窓ガラス面の気流は減るのだが、スラットを水平にするだけでも、ブラインドと窓ガラス間にある空気層の気流を減らす効果があるようだ。これならば外の景色も見えるので開放感があり、明かりが入ってくるため窓側の照明を減らすことも可能だ。

スラットが水平でも窓ガラスとの間に気流がなければ空気層の温度を保ち保温効果があるが、扇風機の風やファンコイルの給気を窓側に向けると水平のスラットでは風を遮ることができず、室内側の空気が窓ガラス側に一気に流れ込み、空気層に気流を作ると保温効果がなくなるので注意が必要である。

5、ブラインドを完全に上げて窓側で測定

ブラインドを完全に上げて、先ほどと同じセンサーの位置にして温度を測定した。

写真-5のように温度が28.8℃である。ブラインドを完全に閉めた時や水平に使用した時の室内側の温度よりも0.1℃低くなっている。

  写真-5 ブラインドを上げて窓側で測定

  ブラインドと窓の間にあった空気層は瞬時に室内空気に吸収されてしまったのだ。ブラインドは日射防止に役立つだけではなく、窓ガラスとの間の気流を抑制することで空気層を作り、空気の移動を遮って保温する効果があることが分かる。

冷暖房時は日射の有無に関係なく、常にブラインドを下げてスラットを水平使用し、日射のある時や終業時には閉めるようにするのが省エネになるようだ。

ブラインドの上げ下げは大変だがスラットの角度調整だけならば簡単である。スラットの水平使用ならばブラインドを上げた場合と明るさも殆ど変らず、見た目も気にならないために、室内環境を変えない簡単な省エネ対策として非常に有効である。

 6、ブラインドを完全に上げて窓の外を測定

最後に窓を少し開けた隙間からセンサーを外に出して測定した。この屋外温度33.2℃の熱の侵入をブラインドで防ぐことができるのだ。

  写真-6 窓の隙間から屋外を測定