ビルの省エネ指南書(19)

空調機のチューニングポイント〔其の1〕

ウォーミングアップ

1、 ウォーミングアップの意味

ウォーミングアップは空調機運転開始時にOA・EAのモーターダンパーが開くのを遅らせて外気負荷を減らすものだ。暖房時ではスプレー式や滴下式の加湿も同様に遅らせて、空調の立ち上がりを早くすることができる。

このようなウォーミングアップを総合図書館では全くおこなっていない。

排気ファンがある以上は、ビルは負圧になるものだ。ウォーミングアップをおこなって空調機から外気を入れないようにしても、負圧のビルは必ず外気が侵入するので、ウォーミングアップをしても意味がない。外気負荷を減らしているつもりが、外気が侵入して、実際は外気負荷が全く減っていないということもあり得るのだ。空調機からのOAも侵入外気も同じ外気である。どうせ入って来る外気ならば、負圧にならない程度に空調機経由で入れた方が、フィルターを通って来るだけましである。

2、 必要な季節

一般的にウォーミングアップが必要なのは夏季よりも冬季である。夏季ならば空調運転開始と同時に外気を入れても、早朝の外気温度はビル内温度よりも低い場合もあり、ウォーミングアップをしないほうが省エネ的にも換気的にもよい場合がある。しかし冬季の早朝外気温度は低いため、ウォーミングアップをおこなわなければ、冷たい外気が入って来て、循環温水温度が上がるまでの間は外気冷房運転状態になってしまう。つまり冬季はウォーミングアップをおこなうほうがよいのだが、外気を入れない代わりに外気が侵入するようではウォーミングアップにならないことは前述した。

3、 総合図書館のウォーミングアップ

総合図書館では全く違った意味でのウォーミングアップをおこなっている。

空調機二方弁のバイパスを少し開けて、空調機を停止させたまま二次ポンプだけを動かし、温水だけを循環させているのだ。

空調機を運転しながらでは中々上がらない温水温度も、空調機が停止していれば水温が直ぐに上昇する。水温が上がるまでの間ウォーミングアップ運転するのではなく、最初から水温が上がっているから、従来のウォーミングアップは必要ない。空調機を運転せずに温水だけを循環させることで、配管内の水温を上げると同時に空調機内を暖めることがウォーミングアップとなっているのだ。このようにしておけば空調機運転開始と同時に温風が出るため、従来のように空調機を運転しながらのウォーミングアップの時間は空調機を停止させて、少しでも運転開始時間を遅らせることができる。

このウォーミングアップをおこなってからは空調機電力と熱の削減になり、冬に外気冷房することもなくなった。

4、ウォーミングアップ時間

地域熱供給ならば24時間熱が供給されているので、二次ポンプを運転しておけばよい。

ボイラーや吸収式冷温水機などの熱源があるビルならば、熱源と循環ポンプだけを運転して、どのくらいの時間で水温が上がるのかを見てから、熱源の起動時間を逆算で決めればよい。

全ての空調機を暖めるのに要する時間は、往還配管の還水温度が往水温度と変らない温度になるまでが目安で、これでウォーミングアップ完了である。この状態になってから空調機を運転すれば即暖房開始である。

5、ウォーミングアップの目的と注意点

このウォーミングアップの目的は熱源と空調機の運転開始を少しでも遅くすることにある。これを冷房時に行えば空調機運転と同時に冷房開始となるので、暖房時と同様に空調運転を遅らせることができる。しかしバイパス弁を開けすぎると無駄な冷暖房となることがあるので開度調整には十分な注意が必要だ。

冬季のウォーミングアップは必要であるが、一般的なウォーミングアップを行うよりも、ウォーミングアップ時間そのものを無くすためのウォーミングアップをおこなったほうが省エネになることをぜひ試していただきたい。