照明のチューニングポイント〔其の3〕
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
照明のチューニングポイント(3)
8、ホールのハロゲンランプ
写真-3のようなホールの天井照明にはハロゲンランプが使用されていることが多い。
水銀灯では直ぐに点灯しないので、ハロゲンランプやレフランプと併用することはあっても、水銀灯だけというホールはないだろう。
蛍光灯が部分的に使われていることもあるが、ハロゲンランプやレフランプと併用しているはずだ。
写真-3のホールでは250Wのハロゲンランプが72灯と間接照明として蛍光灯が併用されている。
ハロゲンランプの消費電力だけで250W×72灯=18㎾になる。これだけあれば冬季の暖房には利用できるかもしれないが、夏季にとっては18㎾の熱が大きな冷房負荷となってしまう。
9、ランプ交換と照度
この250Wのハロゲンランプを小さなW数に代えたら明るさはどうなるであろうか。8ヶ所の照度測定ポイントを決めて、照度を測定しながらランプ交換を行ってみた。
交換するランプは150W型90Wである。
測定の結果、250W時の照度が8ヶ所の平均で154㏓、150W型90Wに交換後の照度が8ヶ所の平均で103㏓、ランプ交換後は67%の照度となった。
W型数としては60%なので、照度はW型数に比例して下がるわけではないようだ。
白熱電球の照度は60W×1灯よりも、20W×3灯のほうが暗いので、今回のランプ交換後の照度が250W時の60%以下になってもよいが、逆に67%と明るくなっているのが面白いところだ。
白熱電球とは違い、ハロゲンランプは小さなW数のほうが、効率がよいのか、天井高が影響しているのかは分からないが、興味あるところである。
10、照度と消費電力
W数は250Wが90Wなので僅か36%の消費である。照度が67%で消費電力が36%ならば、かなり効率の良い省エネ対策となりそうだ。
90W×72灯=6,480W
18,000W-6,480W=11,520W=11.52kW
11kWもデマンドを下げることができる。
ホールの場合は点灯時間が比較的に短いので消費電力量的には金額節減効果は少ないが、電力デマンド低減と冷房負荷減少による省エネ効果が期待できる。地域冷暖房ならば冷熱のデマンド低減にも繋がるだろう。冷房負荷が減少するということは暖房負荷が増加することになるのだが、人が多ければ暖房はそれほど必要ではなく、電力デマンド的には夏季の電力抑止の方が大切である。
11、照度計と視覚
暗くなっては困るのでW数を下げることはできないと思うかもしれないが、照度が67%まで下がっても、視覚的には全く気が付かないだろう。
印刷物を見ても、以前と同じように字が読めるので、明るさが変わったことに誰も気が付かない。
ホールという場所はステージを明るくする必要はあっても、客席はそれほど照度を要求されるところではない。154㏓が103㏓になってもその差が分からないのかもしれないが、これが蛍光灯では2/3の明るさになると視覚的にもはっきりと分かる。蛍光灯の色の波長と電球の波長、照度計で計測する波長と人の目が認識しやすい波長、このような色の波長との関係があるのかもしれない。
照度計で測定して暗くなっていたとしても、人の目が暗くなったと気が付かなければ、それは省エネであり、暗くなったと気付くようならばそれは電気の節約であり、省エネとはいえないだろう