ビルクリーニング技能士への思い

公益社団法人 福岡県ビルメンテナンス協会
副会長 古賀 修

 平成22年現在、ビルクリーニング技能士(以下「技能士」という)の全国総数は、45,423名(九州地区
3,689名、福岡県1,410名)である。特に九州地区においては、当初より技能士の養成に傾注された今は亡き先達の方々の思いが叶ったことに時の流れと重みを感じている次第だ。
 そこで、技能士の養成をさらに深化させていくためにも、検定制度と集合訓練(実技講習)との関係を述
べさせて頂く。
①技能士資格は、上級の技能労働者が有すべき技能及びこれに関する知識の程度にあると認められた者に対し厚生労働大臣から与えられる。
②講習の目的は、ビルクリーニングにおける「掃く・ 拭く・洗う」の基本技術をマスターさせ、技能士資格を取得するに相応しい「技能と知識」を付与することにある。つまり、検定課題内容に沿って標準化された指導技法で訓練を実施しているが、平均合格率が50%前後のレベルでは講習だけでは不十分となっている。
 最近の受講者(=受検者)は、若年層が増加している中、実技訓練において非常に苦労している姿が目
立っている。その原因として①受検資格が緩和(実務経験年数が5年から3年に短縮)されているが、実務内容において経験年数の差を埋めるまでに到っていない。特に使用資機材の基本的取扱い及び操作における習熟度に欠けている。
②実作業上の基本動作を身に付けていないため、作業の急所「成否・安全・やりやすさ」を理解し、実践
 できるまでに可成りの時間を要している。
 このような現実を打開し、次の段階へ導くために講師には個々のレベルに応じた指導方法を強く求められ
ているが、受講者(=受検者)にも、日頃から基本作業を習得すべく自覚と努力が求められている。
 一方で、受講者(=受検者)に共通して言えることは、受講態度は非常に良く、根気よく指導を行えば素直に反応してくれている。しかし、限られた時間で質量共に多岐にわたっている内容を正確に理解できているか疑問に思っている。
 そこで、従事者研修指導者(以下「企業講師」という)の方にお願いがある。それは、企業講師が実技研修においても今一度、基本動作の徹底に時間を割いたうえで作業のレベルアップを図っていただきたいと思っている。企業内研修において、基本動作を習得している受講者(=受検者)であれば、講習での指導内容に十分適応できるので、細部にわたり応用動作の指導徹底が図れる。また、実技課題には作業品質や作業効率等の考え方が大きなウエイトを占めているため、間に合わせの練習では合格基準に達しない状況だ。
 従って、受講者(=受検者)には、事業主の理解と事業所内の協力が不可欠であり、合格に向けて反復練習が出来る環境を与えて頂ければと思っている。
 今年も九州地区で106名(福岡県30名)の技能士が誕生しているが、ビルクリーニング部門のエキスパートとして、品質評価と業務改善の研鑽に努め、活躍されることを切に願っている。