空調機のチューニングポイント〔其の7〕
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
不快指数冷房(2)
5、表-1【温度・湿度・不快指数・エンタルピ】
表-1【温度・湿度・不快指数・エンタルピ】は縦軸が温度で28℃から25℃まで0.1℃毎に、横軸が湿度で45%から60%まで1%毎の表である。
実際の空調では大体この範囲で納まるはずである。
各温度と湿度の交点は、上段が不快指数で下段がエンタルピである。
例えば28.0℃・45%の場合は不快指数が75でエンタルピが55.26kJ/㎏になる。
6、温度と湿度
冷房では温度を設定するだけの温度制御が一般的であり、ビルの空調機でも家庭のエアコンでも同様である。これで温度は維持できるかもしれないが、湿度はどうであろうか。外気の湿度は常に変化しており、雨が降れば外気湿度が100%になってもおかしくはない。一方で外気が乾燥している日もある。これだけ外気湿度が変化すれば、換気のために外気を導入している室内の湿度が変化しないはずはない。つまり室内温度が一定であっても、室内湿度は常に変化していることになる。
室内温度が28℃だったとして、室内湿度が変化すれば室内空気環境はどう変わるのだろうか。
表-1の数値により作成したのが表-2である。
温度℃ | 湿度% | 不快指数 | エンタルピkJ/㎏(DA) |
28.0 | 45 | 75.0 | 55.26 |
28.0 | 50 | 75.7 | 58.33 |
28.0 | 55 | 76.4 | 61.42 |
28.0 | 60 | 77.0 | 64.51 |
表-2 温度28℃の場合
7、温度と不快指数
表-2によれば温度が28℃で一定であっても、湿度が変われば不快指数が変わることが分かるだろう。これではいくら温度を一定に保っても、不快指数をみれば分かるように、体感温度が常に変わっていることになる。
なぜ不快指数が変わるのかといえば、空気のエンタルピが変わるからである。
エンタルピは温度だけではなく湿度によっても変わるために、いくら温度だけを28℃に保っても不快指数が一定にはならないのだ。
ビル内の方達は不快指数が常時変化している室内で働いていることになるのだが、温度が一定ならば不快指数まで気が付くこともなく、「今日は暑いな」と思うことがあっても我慢をするだけだろう。
8、エンタルピ〔kJ/㎏(DA)〕
表-2にはエンタルピも記載している。
温度と湿度により不快指数を計算することはすでに説明したが、このエンタルピも温度と湿度により計算して得られる。
同じように計算するものであっても、計算的には不快指数とエンタルピは全く関係のないものであって、不快指数とエンタルピが一致していないことに注目したい。
表-3は不快指数を75とした場合の表である。
26.5℃の場合は近似値としている。
温度℃ | 湿度% | 不快指数 | エンタルピkJ/㎏(DA) |
28.0 | 45 | 75.0 | 55.26 |
27.5 | 50 | 75.0 | 56.94 |
27.0 | 55 | 75.0 | 58.46 |
26.5 | 60 | 74.9 | 59.84 |
表-3 不快指数75の場合
不快指数が同じであってもエンタルピは同じではないことが分かるだろう。
この不快指数とエンタルピの違いを利用するのが不快指数冷房のポイントである。