ビルの省エネ指南書(3)

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中 村  聡

ビル内気圧のチューニングポイント〔其の1〕
エレベーター機械室(2)

1.福岡市市民福祉プラザ
福岡市市民福祉プラザのエレベーター機械室は排気ファンが無く、年間を通してエアコンで冷房をおこなっている。
写真-1 ダンパー全開の排気口

写真-1のような手動ダンパーで開閉ができる排気口が2か所あり、ダンパーが全開であるため、エレベーターシャフトを通ってエレベーター機械室へ侵入した暖かい空気は、エレベーター機械室で冷房され、そのまま写真‒2のように気圧により自然排気されていた。まさに暖かい空気を冷やしては排気していたのである。
写真2-気圧による自然排気
これは夏季の冷房時でのことであり、無駄にエネルギーを捨てているという意味が分かるだろう。
2.負圧の建物
福岡市市民福祉プラザは建物内が負圧で1階出入口からはドアが開く度に外気が侵入してくるのだが、エレベーター機械室は煙突効果により気圧が上がり、このようなことになるのである。
冬は暖房により暖められた空気をエアコンで冷やしては排気し、建物内にはその分の外気が侵入して暖房負荷となる。煙突効果は空調機停止中も自然発生するため、夜のうちに暖かい空気が排気されてビル内の温度が下がり、朝の暖房負荷が増えることにもなる。
3.ダンパーを閉じる
このようなエネルギーの無駄を失くすために、2ケ所の排気口ダンパーを冷暖房期間中は全閉することにした。ビル最上部には外気に面した開口部は無いほうがよいのだ。煙突効果が発生する最上部を閉じることにより1階の空気が6階に上がることはあるかもしれないが、同じビル内であるから負圧の原因にはならない。
この方が夏季には冷やした空気を捨てることもなく、冬季は建物内の暖かい空気を逃がさなくてすみ、エレベーター機械室の温度を一定に保ちながら、ビル内の負圧を減少させ、結果的にはエアコンの電力消費も減らすことができる。
4.気圧コントロール
中間期の場合は冷房を止めた状態で排気口を全開として、エレベーター機械室の温度が冷房設定温度以下を保てるならば、排気口全開のままでもよいが、保てないのならば全閉のままがよい。
この煙突効果はビル内の温度差が大きくなる冷暖房期間中は大きな効果となり、中間期は小さくなるために、煙突効果だけの気圧上昇による自然排気では機械室の温度を低く保つことは難しいだろう。空調機により外気導入量を増やして気圧を高めることも必要だ。ビル内の気圧と煙突効果をどこまでコントロールできるか次第である。空調機からの給排気量を考えながら、季節毎の最適な調整ができるまで試行錯誤を繰り返す努力が必要となる。写真‒2にあるような道具を作り、エレベーターのドアが開いた瞬間の気流をみれば、その階の煙突効果の有無を見ることができるので、自作してはいかがだろうか。リボン1本の長さ30㎝、幅15㎜を推奨する。