ビル内気圧のチューニングポイント〔其の3〕
排気ファン(3)
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
8、 冷暖房時の排気
冷房時に熱気を排出するならば、該当場所の上部に排気口があれば少し開けておくだけでも自然排気はできる。吹き抜けや天井の高いホールや講堂などが該当するだろう。このような場所の天井付近は熱気がこもっているために、気圧と煙突効果を利用した自然排気をおこなうには最適だ。外気の導入量を増やして建物内の気圧を高めておけば、空気は開口部から自然に排出されるものであり、排気ファンを運転せずにこもった熱気を排出できるのだから電気的にも熱的にも省エネになる。しかし、建物内が負圧では逆に外気が侵入して熱気も共に下りてくる能性があるので注意が必要だ。
9、自然排気ができない映像ホール
熱気がこもっているが、自然排気ができない場所は排気ファンの運転を考えたい。
福岡市総合図書館では映像ホールを使用する日の早朝に数時間だけ映像ホール最上部にあるスポット室の排気ファンを運転して、上部にこもった熱気を排出している。
映像ホールは自然排気ができないので、排気ファンを運転するしか排気ができないからだ。
排気ファン運転中は映像ホール内が負圧となるが、正圧である映像ホール前の廊下から館内の冷房した空気が映像ホール内に流入するため、結果的に映像ホール上部の熱気を排出しながら冷房することにもなっている。館内の冷えた空気を直接排出するよりは、映像ホールの冷房に利用してから排気したほうが省エネになるという考えからである。勿論、僅かな冷房効果ではあるが、映像ホールの冷房運転開始を30分程度は遅らせることができる。
暖房時は建物内で利用できる熱ならば排出しないほうがよい。せっかく暖めた空気を排出してビル内が負圧となれば侵入外気で室内を冷やし、暖房負荷を増やしてしまうことになる。
何度も述べてきたことだが、暖房時にビル内のCO2濃度が低いにもかかわらず、電力を使ってまで排気ファンを運転して、暖房中の空気を排出する必要はない。
不必要な排気ファンの運転を停止させるだけで冷暖房の効きがよくなり、電力と熱の省エネが可能となるので、あとはCO2濃度が1000PPM弱となるように空調機で外気導入量を調整すればよいだけだ。
10、 排気ファンの運用改善
厨房やトイレからは当然に排気しているが、その他の排気ファンも含めてCO2濃度を考えながら排気量を調整して、無駄な排気は極力減らしたい。夏の場合は早朝の排気が冷房負荷にならないならば排気ファンの運転時間を早めて外気導入量も増やせばよい。冬の場合は確実に暖房負荷になるので、運転時間を遅くするなどして外気負荷に応じた運転時間の調整をしたい。正圧のビルならば排気ファンが運転していなくても、圧力差で少しは排気できるので、トイレのような場所であってもそれほど臭気が周囲に漏れることはないものである。
排気ファンの運転時間と排気量を季節に合わせて見直し、部屋毎の給排気量バランスを考えた調整をおこないたい