ビルの省エネ指南書(14)
ファンコイルのチューニングポイント〔其の1〕
機械室(1)
1、ファンコイルのあるビル
ファンコイルのあるビルでは空調機だけで空調をおこなっている部屋と空調機とファンコイを併用している部屋とファンコイルだけで冷暖房をおこなっている部屋のいずれかが考えられる。
ファンコイルは各室で自由にON・OFFや風量の調整ができる場合が多いため、どうしても過剰な冷暖房となってしまい、無駄なエネルギーを使う結果となっている。このファンコイルで使われている無駄なエネルギーを減らすだけでも大きな省エネ効果が期待できるだろう。
2、空調機の二方弁
ファンコイルには空調機に流れる冷温水と同じ温度の水が、流量制御もなく流れている場合が殆どだろう。このようなファンコイルのある部屋ではファンのON・OFF操作と風量切換だけで過冷房も過暖房も自由自在である。
電動弁による流量制御と温度センサーによる風量調整が行えるファンコイルもあるが、各室が自由に設定できるようでは、自動制御の無いファンコイルと同じことである。
この結果、空調機とファンコイルを併用している部屋ではファンコイルだけで室温の維持ができてしまうため、空調機の二方弁が閉まってしまい、ファンコイルが主で空調機が副という空調的には本末転倒なってしまうビルも数多くあるはずだ。このように主と副が逆転した場合の弊害は冬になると顕著に現れる。
ファンコイルの暖房だけで空調設定温度になると、空調機の二方弁が閉まり空調機から導入される外気が加熱されないまま還気と混ざって、室内給気口から吹き出すことになる。この場合の給気温度は室内温度以下となるために、給気口の真下にいる人は冷気を直接浴びて、非常に寒い思いをすることになる。このためにクレームがきたというビルもあるだろう。
それでは給気口からこのような冷気が出ることを無くすにはどうすればよいだろうか。
それにはファンコイルだけでは十分な暖房ができないようにすればよい。空調機の二方弁が開くように調整すれば空調機が主でファンコイルが副となる本来の姿に戻るだろう。
3、冷温水温度
冷房の場合は冷水温度を上げていったらどうなるだろうか。ファンコイルからの給気温度が上がり、ファンコイルだけでは室内冷房温度を維持することができなくなれば、空調機の二方弁が開いてくるだろう。そしてファンコイルの冷房能力が低下するに従い、空調機の二方弁が徐々に開き、最後には全開となる。二方弁が全開まで開くということは外気を十分に冷やして導入していることになる。
暖房の場合ならば温水温度を下げていけばよい。そうすれば冷房と同じように空調機の二方弁が開き、導入した外気を暖めるので、室内給気口からは必ず室温以上の暖かい空気が出るようになる。これで給気口の真下にいる人が寒いということもなくなるだろう。
このように冷温水温度に余裕を無くし、空調機だけで冷暖房できない時だけファンコイルを運転するようにしたい。
空調機とファンコイルを併用している部屋ならば、冷暖房ピーク時には空調機と併用しなければ室温を維持できない冷温水温度と流量に調整しておけば、ファンコイルだけで室温を維持できないので、空調機の二方弁が閉まることはない。これで空調機が主でファンコイルが副となる冷暖房になるだろう。
4、ファンコイル運転時間
空調機だけで冷暖房ができるのならばファンコイルを運転する必要はないので、夏季は日射の入る時間だけ運転するとか、できるだけ運転時間が短くなるようにしたい。ファンコイルの運転は必要最小限の時間にして、空調機で室温が維持できない場合だけ運転すればよい。
運転を各室任せにせず、裏で上手くコントロールするのも、設備員の腕の見せ所だ。