ビルの省エネ指南書(16)
ファンコイルのチューニングポイント〔其の2〕
窓
1、ブラインドの効果
ブラインドの効果がどのくらいあるのかを確かめるために、温度を測ってみることにした。
天候は曇りで日射はなし。
測定する窓ガラス面の直ぐ外側の外気温度が30.7℃。
ブラインドを完全に下して閉めた状態で、窓ガラスとブラインドの間が29.9℃。
窓ガラスを挟んで外気温度との差は僅か0.8℃しかなく、外気温度が窓ガラスを通過して入って来ていることが分かる。
ブラインド直ぐ手前の室内温度は27.2℃。
ブラインドを挟んでその差は2.7℃。
閉めたといっても、スラットの間がかなり隙間のある状態でもこれだけの温度差がある。
ブラインド自体の温度を放射温度計で測ると28.8℃で窓側から測っても、室内側から測っても同じであった。スラットは薄い金属なので温度差が出ないのだろう。ブラインドの窓側と室内側の空気温度と比較すると僅かだが窓側に近い温度である。
屋外には気流があり、室内にも気流があるが、窓ガラスとブラインドで挟まれた間には殆ど気流がないために、この空気の層が両者の間で熱を伝えない役目を果たしているようだ。ブラインドは日射を反射するだけではなく保温効果もあるのだ。日射が無くてもブラインドは下しておいたほうが冷房の省エネになるだろう。
2、ファンコイルの給気方向
もしブラインドが無ければどうなるだろうか。屋外にも室内にも気流があるのだから窓ガラス面で熱交換するであろうことは想像できる。特に室内側の気流が大きければ大きいほど熱交換量も増えるだろう。
このような状態の窓にファンコイルの給気を向けると、給気温度が低いために熱交換量がさらに増えるはずだ。
ブラインドは下げるほうがよいが、スラット間に隙間があるため、下げるだけでは不十分であり、風を当てないように注意する必要がある。
窓ガラスは空気を通さないが、ブラインドは隙間から空気を通すからである。
このブラインドに扇風機の風を当てると、窓ガラスとブラインドの間に気流が生じて、窓ガラス手前の空気温度が下がり、その空気が窓ガラスとの間で熱交換することになる。
ファンコイルの給気をブラインドに当てると、室温よりもさらに低い温度の空気が流れて、窓ガラス面で熱交換することになってしまう。
ファンコイルに流れる冷水温度が7℃だと給気温度は10℃以下であろう。給気温度が低ければ低いほど窓ガラスとの温度差が大きくなるため熱交換量も多くなる。このことからも冷水温度をできるだけ上げたほうが、ファンコイルからの給気温度が上がるので、熱交換量が少なくなるだろう。勿論、ファンコイルからの気流を窓に向けないことが一番である。
3、窓ガラスは熱交換器
窓ガラスの屋外側を一次側、室内側を二次側とすると、屋外である一次側の温度も気流も変えることはできない。しかし、窓ガラスが熱交換器ならば、二次側に気流がなければ熱交換しないはずだ。扇風機の風やファンコイルの給気を窓に向けるということは、二次側に気流を作ることになり、外気と熱交換してしまうのだ。
特に日射の当たっている窓の室内側に気流があると最悪である。扇風機の風を当てると暖房をしているのと同じで、室温が上昇するだろう。室内温度の空気を温度の高い窓ガラスに当てるのだから温度が上がって当然である。
ファンコイルからの気流ならば扇風機よりも温度が低いため熱交換量が増えて、全く冷房効果が期待できなくなるだろう。
触らぬ神に祟りなしというが、窓ガラスの温度は自然の外気条件次第である。自然に逆らっても意味がないことなので、窓ガラスには触らないようにすればよい。そのためにもブラインドの有効利用を心がけたい。