空調機のチューニングポイント〔其の4〕
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
加湿(3)
7、総合図書館の上水使用量
表-1は総合図書館における平成10年度と平成20年度の上水使用量を比較したものだ。
館内湿度は40%ぎりぎりを維持している。
1・2月は常時加湿をしている時期であり、7・8月は加湿することはないため、比較に使用するには最適な時期である。
地域冷暖房のため冷却塔はなく、トイレは中水を使っている。加湿以外での上水使用量は、図書館利用者が直接使うものが殆どでなので、来館者数により増減する。
平成10年度 | 平成20年度 | |
7・8月使用量 | 520㎥ | 453㎥ |
7・8月開館日数 | 52日 | 52日 |
7・8月の日使用量 | 10.0㎥/日 | 8.71㎥/日 |
1・2月使用量 | 1,196㎥ | 495㎥ |
1・2月開館日数 | 46日 | 46日 |
1・2月の日使用量 | 26.0㎥/日 | 10.76㎥/日 |
日使用量差 | 16.0㎥/日 | 2.05㎥/日 |
表-1 上水使用量
この表によると平成10年度と平成20年度の、加湿をおこなっていない7・8月の上水使用量は520㎥と453㎥で13%減となっているが、加湿期の1・2月を比べてみると平成10年度の1,196m3に対して平成20年度は495m3と半分以下にまで減っている。開館日当りの日使用量差を比較すると16 m3/日-2.05 m3/日=14.05m3/日となり、こんなにも減っているのだ。この上水使用量の差が全て加湿によるものだと断言はできないが、加湿チューニングが大きな要因であることは間違いないはずだ。
冬季と夏季の日使用量の差が加湿に使用している水量だとすれば、平成10年度はこれだけの水が蒸発せずに空調機内で温熱を奪い温水となって排水されていたことになる。この数値をみればいかに効率よく水を蒸発させることが大切なのかが分かるだろう。
8、疑問点
ただし表-1の数値には疑問点があるので説明したい。
7・8月は学校が夏休み期間中であり来館者が最も多くなる時期である。それに比べて1・2月は来館者が多いとはいえない時期である。
来館者が多ければ水の使用量が増える訳だから、7・8月のほうが1・2月よりも多くなるはずである。よって、日使用量の少ない1・2月と日使用量の多い7・8月の数値を比較することは正確とはいえない。よって7・8月の日使用量を少なくするか1・2月の日使用量を多めにして計算するほうが正確であろう。
次に開館日の日数で割ることにも若干の疑問が残る。休館日であっても一部の空調機は運転しており、十数名の人が居るのであるから、開館日より少ないとはいえ水の使用量はゼロではない。しかし条件的には1・2月も7・8月も同じであり、休館日の使用量は開館日と比べて極端に少ないため無視することにした。
これらの疑問点があることを考慮して計算すれば、平成10年度と平成20年度の日使用量差は、表-1での計算値14.05m3/日よりも増えることになり、15m3/日以上になるのではないかと推測する。つまり加湿チューニングをおこなう以前は15m3/日以上もの温水を無駄に捨てていた可能性があるのだ。
ビルの規模や用途、加湿装置の種類、加湿状況、設定温度・湿度によっても違ってくるので、あくまでも参考の数値と思っていただきたいが、もし60℃の熱コイルにスプレーしても蒸発しなかった、これだけの量の温水が捨てられているとすれば、どれだけの熱エネルギーを捨てていることになるのだろうか。
気が付かないままに、これが現実となっているビルがないとは限らない。