空調機のチューニングポイント〔其の8〕
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
不快指数冷房(3)
9、暖房時の不快指数
この不快指数は冷房時に限ったものではなく、暖房時においても同様である。
普通は加湿をして室内湿度を40%に保っていても、雨が降っている日は室内湿度が40%以上になることもある。このような日は暖かいと感じたことがあるのではないだろうか。これは室内のエンタルピが上がっているからであり、不快指数も上がっているからである。しかし暖房時は室温が低いので不快指数が上がっても不快になる訳ではなく、乾燥状態のビル内湿度が適度に上がるので快適になるだろう。冷房の不快指数が、暖房では温度を上下逆にした不快指数となってしまうのだ。
冬季の雨天時は外気導入量を増やして外気湿度を暖房に利用することも省エネ対策として考えてみたい。
冬期は外気温度が低いので、外気負荷を減らすために、外気導入量を減らしているビルも多い。湿度が低いために室内でわざわざ加湿をおこなって、加湿が暖房負荷となっていることもあるだろう。このような場合は外気をエンタルピとして考えてみればよい。雨の日ならば湿度の高い外気を導入するほうが省エネになることもある。外気の温度が低くても湿度が高ければエンタルピとしては高くなるので、温度の低い空気で外気暖房をするということもあり得るのだ。
冬期だから外気を入れないのではなく、エンタルピを考えながら、導入量のチューニングを考えるべきであろう。
10、不快指数75以上
不快指数は温度と湿度で決まるものであるが、温度と湿度で不快指数が決まるものではない。
同様にエンタルピも温度と湿度で決まるものであるが、温度と湿度でエンタルピが決まるものではない。
それでは冷房時の不快指数はどのくらいがよいのかを表-1【温度・湿度・不快指数・エンタルピ】を見ながら考えてみたい。
一般的には不快指数75を超えると不快に感じる人が多くなるので、不快指数75がビルの空調としては丁度良い目安になるだろう。目標としては75以上、できれば76を推奨したい。
温度が28℃の時に不快数が75となるには、湿度がいくらになればよいのかを計算していただきたい。
湿度が45%になるだろう。
75=0.81×28+0.01×45(0.99×28-14.3)+46.3
計算が複雑だがこのようになる。
湿度に45を入れれば式が成り立つのだ。
表-1でも確認ができる。
11、不快指数の維持
それでは不快指数75は温度が28℃で湿度が45%の時だけなのかというと、それだけではない。不快指数の計算式を見ても分かるように、不快指数の計算には温度と湿度が必要なのだが、不快指数では温度と湿度は計算できないのだ。
表-1を見ても同じ不快指数が何箇所もあることでそれが分かるだろう。
表-3にもあるように温度が27.5℃で湿度が50%でも不快指数は75であり、温度が27.0℃で湿度が55%でも不快指数は75なのだ。
湿度45%で不快指数を70にする時の温度も参考までに計算してみると、24℃となる。
同じ湿度で不快指数を75から70にすると、温度が28℃から4℃も下がってしまう。
不快指数1が温度0.8℃に相当するので、不快指数75~76は温度0.8℃以内を維持しなければならないのでかなり難しい。
外気湿度も毎日違うだけではなく、夕立でもあれば急激に外気湿度が変化するからだ。
厳密に不快指数を設定しても維持することが難しいのならば、最低でも75にするというくらいでよいだろう。76を中心として75~77の範囲ならば維持もできるだろう。