公益社団法人 福岡県ビルメンテナンス協会
副会長 古賀 修
建築物環境衛生管理技術者(以下「管理技術者」という)は、「建築物衛生法」により、「建築物の維持管理が環境衛生上、適正に行われるように監督をする」と定められ、その趣旨から環境衛生管理の実務を全般的に監督する技術的職務を担っている。
監督範囲については、「建築物環境衛生管理基準」に従った維持管理のチェックと、特定建築物の所有者等に義務づけられている環境衛生関係の帳簿書類の整備や所轄官公庁への報告、立入検査への対応等についての業務となっている。このように管理技術者は重要な任務を担っているわけであり、実行段階での役割にも厳しいものがある。
第一に、担当業務の監督者として管理計画の作成提案を行い、必要に応じて技術的立場からの意見具申等を行うことが求められている。
第二に、日常管理業務の進捗状況と衛生的環境の確保がなされているかどうかのチェックと把握も重要な事項となる。例えば、清掃部門も含め質的に高い環境管理を提供できる手法の確立ということも、その職務の一つと考えられる。
第三に、不適正な環境状況の原因を調査・究明し、対策を立てることも求められる。 こうした役割を果たし、管理業務の先頭に立っているのが管理技術者なのである。また、管理技術者は、「建築物環境衛生管理基準」に示された空気環境の調整、給・排水の管理、清掃管理、ねずみ・こん虫等の防除等のかかわりもあり、その業務は広範囲にわたる。そして、各項目ごとのチェックを行い、問題が発生すれば事例に沿って知識と技術力を駆使し、最適な手法で改善策を講じなければならない。改善措置がうまくとられたときは、今までの努力が報われた実感が得られ、安堵して胸をなでおろすこともできるであろうが、時にはビルオーナー側の事情も混在して、法的規制上の管理技術者としての位置づけや目的意識さえも疑問視せざるを得ない状況ともなる。しかし、人為的・経済的理由だけで“生きている建築物”を停滞させるわけにはいかないのが現実である。
過去において、県行政側から立入検査時における対応のまずさを指摘する意見をいただいた。
その理由として、
①選任された管理技術者でありながら、専門分野以外における認識が不足している
②応対者が統括管理者であるからといって安心できない
という厳しい内容であった。私自身の反省も踏まえ精
査してみると、①については「建築物環境衛生管理技術者」の資格を取得すれば、それで目的を果たしたと
いうわけではなく、不得手の分野についても、また新たなる分野においても不断の知識・技術の修得に努力していかざるを得ないのである。②については、統括管理者としての使命と役割を再認識することが前提となる。
統括管理者には、建築物内の維持管理業務全般に対して管理能力と高い技術力が求められている。まして
「建築物環境衛生総合管理業」の登録業者であれば、事業所内の管理体制のなかで問題を摘出し、かつ改善
していく立場である。しかし、いつの間に有名無実になっているのか、さらには事業所組織において統括管理者と管理技術者の役割分担を強化するあまり、密接な連携と協調が度外視されているのではあるまいか。
いずれにしても、資格を有する管理技術者=実務に精通している管理者が、建築物における環境衛生管理
業務の統括を行う必要があることに違いはない。