公益社団法人 福岡県ビルメンテナンス協会
副会長 古賀 修
清掃作業監督者は、建築物衛生法の事業登録制度に定められた人的基準の一つであり、建築物衛生法
の目的や環境衛生管理基準をよく理解しておく必要がある。
言うまでもなく、環境衛生管理基準とは、建物所有者などの維持管理権原者が遵守すべき事項であるが実際には清掃管理業務を行う者は委託を受けて業務を遂行している“建築物清掃業”や“建築物環境衛生総合管理業”における事業登録者(以下「事業者」という)である。すなわち、事業者が業務を遂行するうえで最も留意しなければならない事項ということになる。
ここで、昭和55年に導入された事業登録制度の趣旨を再確認してみることにする。
①優良事業者の目安として登録業を機能させようとしたところにある。
②登録制度は排除の論理ではなく、参加の論理によって構成されている。
③登録基準に当てはまらない者まで参加させようとするものではない。
さらには、平成14年4月の一部改正により、検査・チェック体制の強化が必要となった。すなわち、建築物清掃業の登録基準の中で、新たに加えられた「質的基準」の内容であり、平成16年3月厚生労働省告示第118号で最終改正となっている。
特に重要な項目としては、「作業計画・作業手順書の内容及び清掃作業等の実施状況について、3月以
内ごとに1回、定期に点検、必要に応じて適切な措置を講じること」となっている点だ。このことは、建築物清掃に「定期的な点検・評価・改善」が必要とされ、清掃の目的を達成していくうえで、“出来映えの良否”はもちろんのこと、“継続的な維持管理体制”も求められることになった。
したがって、清掃作業監督者は、法の理念を業務に反映させ、これを実現させる清掃管理部門の最高責任者であり、その使命と期待も大きい。そして同時に、建築物清掃についての深い知識と高い技術を有することが望まれている。
なぜならば、建築物の形態や構造は高度化し、建材等の多様化に伴い使用資機材も進化しているからだ。
また、清掃作業は、個人単位で行われる単独作業が大きな割合を占めるものであり、そのために美観や品質のレベルが従事者個人の資質や技能に影響されやすい。しかし、そのようなレベルの相違は生じさせてはならないのである。したがって、清掃作業監督者は常に自己研鑽に努め、作業レベルの向上と品質の標準化を目指すべく、従事者に対する教育指導における管理能力も有して欲しいと考える。
以上のような観点から、建築物衛生法における環境衛生管理基準を遵守し、かつ清掃作業の成果をあげることができるか否かは、ひとえに作業の指導・監督・教育訓練等にあたる清掃作業監督者の双肩にかかっていると言える。