空調のチューニングポイント
東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡
温度・湿度・日射・風(3)
8、室外機の簡単な省エネ対策
放熱器の上部にこのようなボードを取り付けて庇にした。条件は全て満たしているはずだ。太陽の高い夏は日射を防ぎ、太陽の低い冬は日射を当てるという、窓の庇と同じ効果がある。
費用は遮光シェードと大差はない。取り付け時間は遮光シェードと同程度なので設備管理員でもできるだろう。
時間帯によっては完全に遮光はできないが、10:00~14:00の時間帯の遮光には問題はない。日差しの強い時間帯の遮光が大切だ。室外機によって取り付け方法も変わってくるので、その都度工夫をしなければならない。市販の材料をどのように使うかがポイントになるが、このような取り付け方法ならば強風にも耐えられるであろう。
次は両面に放熱器がある室外機だ。
写真の室外機は上部にあるファンと放熱器が近いためショートサーキットを起こしやすい形状である。室外機上部にボードを固定できるスペースがあるので、本体ボルトを利用して直接取り付けた。風圧に弱い取り付け方法なので、ワイヤーを斜めに張って補強している。強風時を考えて取り付ければよいだろう。これでショートサーキットも起こり難くなるはずだ。このような庇による遮光は、風を遮るわけではないので風通しもよい。材料費も最小限である。
9、屋上の室外機
ビルの屋上は風圧が強いので注意しなければならないが、周囲が囲われているならば、下からよりも上からの風圧に注意すればよい。
この庇は室外機から出ている長さが短いので、それだけ風圧には強い。遮光面積は減るのだが、太陽が真上にある時間帯は十分に遮光できている。庇を取り付けた室外機がこれだけ並べば、西日の時間帯になると庇の影が斜めになり、隣の室外機を遮光するので無駄がない。
写真では分かり難いが、庇に使っているボードには4㎜程度の穴が多数開いている。ボードに厚みがあるので横から見ると分からないが、強風時の風圧を若干は逃がすことができる。穴のないボードよりは良いだろう。
10、効果の高い遮光対策
室外機が狭い間隔で並列に設置されている場合は、通路を確保して遮光する必要がある。低い位置の庇ではメンテナンス時の通行に支障があり、狭い通路に遮光シェードを斜めに取り付けるようでは通行もできなくなる。
このように狭い間隔では、間隔の狭さを逆に利用して遮光すればよい。このような遮光シェードならば、頭を少し下げれば通行に支障はないし危険もない。遮光効果は完璧だ。両サイド以外からのショートサーキットも防止できる。
風通しも問題は無い。僅かだが水が通過するシェードなので雨水が溜まる心配もない。日射にも強い材質なので数年は劣化しないだろう。
唯一の欠点は強風である。あまり風が強い場所では破れる心配がある。固定箇所が多ければ破れても飛ばされることもなく、人に当たって怪我をするようなものでもないので、その点は安心して使える遮光シェードである。庇による遮光と違い、西日になっても遮光効果が変わらない点はよいのだが、冬季の暖房時も日射が当たらないということでもある。
冷房と暖房のどちらを重点的に考えるかは、ビルのある地域性と用途にもよるだろう。ショートサーキットは排気温度の低い冬季のほうが起こりやすいので、遮光のデメリットだけではなく、トータルで効果を考えたい。
11、空冷チラー
この空冷チラーは形状に特徴がある。放熱面が下にいくほど内側に傾斜しているのだ。これだけでも庇と同様の効果が期待できる。
ショートサーキット対策であろうか、上部の放熱ファンも若干ではあるが煙突のように立ち上がり、放熱器との距離を離している。
この形状だけでは日射を完全に防止することはできないが、これに庇があればさらに遮光能力の高い空冷チラーになるだろう。
庇を僅かに内側へ傾斜させて、雨水が放熱フィンの真上へ落下するように工夫できれば、放熱フィンの汚れを洗い流すのにも効果的だ。
画一的な形状ではなく独創的な形状のチラーであり、この形状を省エネ的利点としているところは大いに評価されるべきチラーである。