ビルの省エネ指南書(69)

 空調のチューニングポイント

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

温度・湿度・日射・風(6

20、室外機の吊り下げ
小型の室外機は、ベランダであればこのように吊り下げて設置されていることが多いだろう。
このような設置方法ならば日射が当たることも殆どないため、温度的にも床や屋上に設置するよりも有利である。排気が外に抜けやすいので夏はベランダに熱気がこもることもない。
唯一の欠点は雨がかからないために放熱器が汚れることである。汚れの度合いに応じて定期的に洗浄をおこなうようにしたい。
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何の問題も無いように思える設置方法であるが、この写真と次の写真を見て何か省エネアイデアが浮かんで来ないだろうか。
よく見ていると面白いことに気が付くはずだ。全てのビルで同じことが出来る訳ではないが、室外機の省エネをおこなううえで、参考になるヒントが隠されている。
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エアコンの室外機はできるだけ夏は冷やして冬は暖めたほうが良いのだが、自然任せの外気でそれをおこなっている以上は、夏は高く冬は低い外気温度を変えることはできない。
もし、夏の外気温度を下げて、冬の外気温度を上げることができる方法があるとすればどうだろうか。外気温度を変えることなど出来るはずがないと思うだろうが、アイデアがあればできるのだ。この写真のようにすれば、室外機周囲の外気温度だけではあるが変わるはずだ。
写真の相違点が分かるだろうか。
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21、居室からの排気
 壁面排気口の排出方向が変わっているのに気が付いただろうか。室外機の左側壁面にあるのは室内排気ファンの排気口である。室内に人が居れば常時運転しており、夏は冷房、冬は暖房をおこなっているので、この排気口からの排気温度は、夏は外気温度よりも低く、冬は外気温度よりも高くなっているはずだ。
この排気方向を室外機に向けることで、室外機が吸いこむ空気温度を変えることが出来る。
夏はこのエアコンの室内機で冷やした冷房空気が排気されるので、この排気冷熱を室外機の冷却に利用する。冬はこのエアコンの室内機で温めた空気が排気されるので、この排気温熱を室外機で汲み上げて暖房に利用する。
このようにして排気の温度と風を利用すれば、排気を利用しない場合と比べて、このエアコンの冷暖房効率が良くなることは分かるだろう。
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この写真のように排気口が室外機に近ければ排気の熱を効率良く回収することができるが、既存の建物では排気位置の移設は無理だろう。
建物の設計時点で熱回収までを考えて、排気位置と室外機の設置位置を決める必要がある。

22、埃対策
 ビルの事務室等の排気は冷暖房中の綺麗な室内空気に思えるが、排気の埃が室外機の放熱フィンに付着して目詰まりする可能性がある。
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排気のファン自体にも粉塵が付着して、一目見て汚れが分かるほどになっている場合が多い。
シロッコファンは簡単に取り外せないので、この状態のままシロッコファンに堆積した粉塵を掃除しようとしても粉塵が飛散して、マスクをしていても口や鼻から吸い込んでしまう。
どのビルもシロッコファンの清掃には苦労していることだと思うが、その対策としてシロッコファンを汚さない為に、フィルターを取り付けるようにすれば室外機への埃対策にもなる。
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フィルターを取り付ければ、埃や粉塵を除去でき、粉塵がシロッコファンに付着することも、室外機に埃が付着することもなくなる。
定期的にフィルターを交換して、汚れたフィルターは屋外で洗浄をおこなえばよいので、室内が汚れることもなく衛生的である。
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フィルターにもよるが、この写真のフィルターの場合は風量が20%減少するので、それだけ外気負荷も減って省エネにもなるだろう。
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