投稿者「福岡ビルメンテナンス協会」のアーカイブ

障害者雇用納付金制度の改正について

「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正(平成20年12月)に伴い「障害者雇用納付金制度」の対象事業主が拡大され、平成27年4月から下記のとおり施行されます。

■「障害者雇用納付金制度」改正概要
 1.平成27年4月から常時雇用している労働者数が100名を超える事業主も対象となります。
   (現在は200名を超える事業主が対象)

 2.平成28年4月から前年度(平成27年4月~平成28年3月)の雇用障害者数をもとに次の手続きが必
   要です。
   (1)障害者雇用納付金の申告
   (2)法定雇用率(2.0%)を下回る場合は、障害者雇用納付金の納付
   (3)法定雇用率(2.0%)を上回る場合は、調整金の支給申請が可能

・詳細のチラシはこちら→

ビルクリーニング技能検定の複数等級化に伴う説明会【会員企業限定】

全国ビルメンテナンス協会では、平成28年度の試験時より厚生労働省の指導を仰ぎながらビルクリーニング技能検定を単一等級から複数等級に制度を変更し、実務に即した検定試験に改めていく予定です。
つきましては、検定試験の改正に伴う説明会を会員企業の皆さま方を限定として無料で開催することになりました。万障お繰り合わせの上、奮ってご参加いただきますようお願い申し上げます。

1.日時    平成27年6月23日(火)
14:00~16:00

2.場所     福岡朝日ビル会議室 地下1階 16号室

*チラシおよび申込書はこちら→

ビルの省エネ指南書(49)

熱源機械室のチューニング(13)

東洋ビル管理株式会社 
省エネルギー技術研究室 
室長 中村 聡

  1. 空調機二方弁開度(2/3)

3、PID制御
 空調機二方弁がどのような制御になっているのか、PID設定値を調べたことがあるだろうか。空調機毎に写真のようなデジタル指示調節計があるはずだ。この機種は比較的新しい型であるが、基本的には旧型も同じような外見をしている。
image001

 写真のデジタル指示調節計は暖房中の温度を表しており、設定値が23.5℃で、現在の指示値が24.6℃となっている。還気温度で制御しているのだが、設定温度よりも1.1℃も高い還気温度になっていることに留意したい。
 PID、意識的も。
 設定温度表示の下にLEDが横に10から3灯目までが点灯している。このLEDが二方弁の開度を表している。
 
設定温度よりも指示温度が1.1℃高いので、二方弁が約310開いている状態を表すためにLED3灯点灯している。110単位毎の開度表示ではあるが、これだけでも大体の開度が分かるので空調状態の把握はできる。
 
二方弁の種類や設置位置によっては、直接開度を確認することが難しい場合もあるが、二方弁を見なくてもこのLEDが二方弁の開度を表しているので、現在の開度が一目で分かって便利である。
 
ボタン操作でディスプレイに開度が表示される機種もあるので確認してほしい。

4、比例(P)値
 写真はディスプレイを比例値に切り替えた時の表示である。比例値が4.0となっており、温度に直すと±2℃を表している。1.142.7510なのでLED3個点灯しているのだ。
image002

 このデジタル指示調節計は4.0の表示がそのまま温度となるので分かりやすいが、機種によっては12.04℃を表す場合等もあるので注意したい。
 
積分値と微分値を「0」にして、設定温度と指示温度の差に対する二方弁の開度を見れば、比例値に対する開度が分かるが、設定温度と指示温度が一致している状態では、比例値に関係なく開度が50%となり比例値の見当が付かない。設定温度と指示温度に1℃程度の温度差がある時に調べたら開度との比較で比例値が逆算できるだろう。
 
冷房時の二方弁開度と設定温度28℃の関係を比例値±1℃でグラフ化すると次のようになる。
 
縦軸が二方弁開度で横軸が温度である。
2014-06-04_1754

 冷房温度を
28℃設定時に指示値が29℃以上になれば空調機の二方弁が全開、27℃以下になれば全閉となる。27℃~29℃の間は温度と二方弁開度が比例する冷房時の比例制御のグラフである。

5、設定温度と指示温度
 
前述のデジタル指示調節計は暖房時の23.5℃設定で比例値±2℃なので次のグラフとなる。   温度表示写真の設定温度、指示温度、二方弁開度を表すLED点灯個数をこのグラフと比較してみれば比例動作であることが分かる。
2014-06-04_1757

 一見何の問題もないように思えるグラフだが、よく見れば疑問が生じるだろう。指示値が設定温度と一致するのは、二方弁が50%開の時だけなのだ。
 
これでは設定値を維持できる訳がない。
 
負荷が常に変動している実際の空調において、指示値と開度50%が一致することは極まれであり、指示値と設定温度に差があって当然だ。
 
1.1℃もの温度差が出るのはこのためである。
 
このデジタル指示調節計の比例値では、指示値が±2℃違ってくることもあるので、比例制御だけでは設定温度を維持できないことが分かる。
 
冬季はこれを利用して比例値を大きく設定するという手もある。例えば設定温度を現在よりも1℃低めに設定して、比例値を±2℃から±3℃にすれば、同じ指示温度であっても二方弁開度が小さくなるため、指示値が設定温度を3℃も超えることはなくなり、二方弁が若干は開いた状態になる。
 
冬季に二方弁が全閉している空調機の給気温度は室温以下の冷たい空気になるが、若干でも開いていれば給気温度が上がるため、給気口の真下に居る人が寒く感じることもなくなるだろう。

6、積分(I)値
 
写真のデジタル指示調節計は「0」であった。
 
取扱い説明書では、積分動作はオフセットをなくすように働く動作だと説明が成されているが、これでは積分動作の意味が理解し難いだろう。
image005

 空調機二方弁の動作だけを考えると、次のグラフのようになると考えたほうが、ビルの設備管理員としては分かりやすいはずだ。
 
比例値の折れ線がそのまま左側に移動したグラフである。28℃の時は開度が90%となっている。
 
開度を90%にして設定温度を維持しているのだ
2014-06-04_1758

 次のグラフはそのまま右側に移動したグラフである。28℃の時は開度が10%となっている。開度を10%にして設定温度を維持しているのだ。
2014-06-04_1758_001

 これらのグラフのように折れ線を左右に移動させて、温度に対する二方弁開度が変化できるならば、設定温度と指示値を一致させることができる。
 
これを行うのが積分動作と思えば分かりやすい。

防火管理及び防災管理業務の受託を業とする法人等の教育担当者に対する講習のご案内

防火対象物における防火管理及び防火管理上必要な業務の受託を業としている法人等は、標記の講習を受講した者の中から教育担当者を定め、防火・防災管理業務に従事する従業員に対し、組織的かつ計画的に防火・防災管理に関する知識及び技能の教育を行うこととされています。
このたび、下記のとおり講習が開催されますのでお知らせいたします。

1.日時   平成27年10月28日(水)~29日(木)
9:30~17:00(両日とも)

2.場所   福岡市民防災センター  3階講習室
(福岡市早良区百道浜一丁目3番3号)

3.受講費用  9,000円

*講習の案内はこちら→

*申込書はこちら→

差別禁止・合理的配慮指針説明会(九州ブロック)の開催

平成27年3月25日付で、「障害者差別禁止指針」および「合理的配慮指針」が公布されました。当該指針の施行を平成28年4月1日に控え、円滑な施行のため、予め当該指針の内容について事業主の方々にご理解いただくために、下記のとおり説明会が開催されます。

1.開催日時  平成27年6月23日(火)10:00~12:00
又は 14:00~16:00

2.開催場所  福岡合同庁舎 本館5階 共用第2会議室
(福岡市博多区博多駅東2丁目2番11号)

3.申込方法  別紙の申込書にて6月12日(金)までに、お申込みください。

*案内および申込書はこちら→

ビルの省エネ指南書(48)

熱源機械室のチューニング(12)

東洋ビル管理株式会社 
省エネルギー技術研究室 
室長 中村 聡

⑨   
空調機二方弁開度(1/3

1、冷熱供給量

 空調機の二方弁が閉まるということは、冷水の温度と流量に余裕があるからだ。冷熱供給量に余裕があればエネルギーの損失に繋がるため、空調機二方弁が丁度全開となるように冷水の温度と流量をチューニングして無駄な損失を無くしたい。
 二方弁が全開になっても往還ヘッダ差圧を現在よりも低く設定できれば搬送動力がそれほど増えることはない。往還ヘッダ差圧が高いビルが多いようなので、差圧を下げる余地はあるだろう。
 空調機の二方弁が閉まっていたほうが、搬送動力が減り、省エネになるような気もするのだが、往還ヘッダ自動バイパス弁が開くようでは搬送動力が減る訳もなく、冷水温度が低いと配管からの放熱や空調機での除湿量が増えるため、搬送動力が減る以上に冷熱使用量が増えてしまう。
 冷水温度を下げて、往水と還水の温度差が大きくなるようにしたほうが、搬送動力が減ると云われるが、往還温度差が変わらなければ、冷水温度を下げても搬送動力が減る訳もない。それよりも冷水温度を上げながら往還温度差を大きくすることを考えるべきである。空調機の二方弁全開状態で往還ヘッダ差圧をできるだけ下げて、往還温度差を大きくするチューニングをおこなうのだ。
 流量が増えるのは空調機の二方弁が徐々に開いていく過程である。空調機の二方弁が全開になるまで冷水温度を上げていき、全開となった時点で冷熱供給量が不足して充分な冷房ができない空調機があった場合にだけ、流量をさらに増やすか、冷水温度を下げるかを考えればよい。
 しかし、搬送動力を減らすために往還ヘッダ差圧を下げ過ぎると、冷水流量が不足する空調機が出て来る。特に配管方式がダイレクトリターンの場合は影響が大きい。配管抵抗の大きな空調機には冷水が流れ難くなり、空調機毎の流量に差が出て来ると、冷房に支障が出る空調機もあるだろう。
 搬送動力削減を考えるよりも冷水温度を上げることを優先させたほうが、省エネ効果は大きくなる。搬送動力が増えたとしても、冷水温度を上げることによる省エネ効果のほうが大きいので、搬送動力の僅かな増加は気にする必要もないだろう。
冷水温度を上げて除湿量と放熱を減らした結果として冷熱使用量が減れば、その分の搬送動力が減るので、このほうが効率的な削減ができる。
 経験的にではあるが、空調機の二方弁が丁度全開となる位置での冷水の温度と流量の、省エネ的にバランスがとれた点が最善であろう。
 冷水温度が低くて冷水流量が少なければよいものでもなく、冷水温度が高くて冷水流量が多ければよいものでもないのだ。

2、二方弁

 空調機の二方弁が全開になった時点で、それ以上は二方弁での流量調整ができないということでもあり、ヘッダ差圧を手動で調整しなければ流量が不足して、室内温度が高くなってしまう。
 空調設定温度よりもプラス0.5℃以内になるように冷水流量を調整し、プラス0.5℃以上になる時は冷水温度を下げて対応すればよい。
 壁面に設置されている室内温度サンサーは、壁面温度の影響を受けて、夏は高く冬は低く出る傾向があるため、設備管理員はビル内を巡回して、体感により空調温度を確かめることも必要である。
 この写真は夏季の14:00~15:00の間に、あるビルの空調機6台の二方弁を撮ったものである。空調機はこれ以外にもあるのだが、この写真のような視認性の良い二方弁だけを撮っている。

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 冷房ピーク時間帯の二方弁は全て全開である。丁度全開となるように、時間によって刻々と変化する冷房負荷に対応する冷熱の供給量を、手動により冷水温度と流量で調整しているのだ。

第37回アビリンピック福岡2015参加選手募集について

この大会は、障がい者が日ごろ職場等で培った職業技能を競うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々が障がい者に対する理解と認識を深め、その雇用の促進と地位の向上を図ることを目的として開催されます。
また、本大会のビルクリーニングの部は、当協会が公益事業の一環として全面的にバックアップを行ない開催されます。
多数の方の参加をお願い申し上げます。

・パンフレットはこちら→

・参加申込書はこちら→

ビルの省エネ指南書(47)

熱源機械室のチューニング〔其の11〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

熱源機械室のチューニング(11)

1、冷房と暖房

 冷房は暖房よりも難しい。それは服装の相違が大きいからだ。男性を例にすると、夏季は背広にネクタイを締めている人もいれば、Tシャツ1枚の人もいる。これだけ服装に違いがあれば、同じ室内であっても、涼しく感じる人もいれば、暑く感じる人もいるはずだ。背広の人が快適ならば、Tシャツ1枚の人は寒く感じることだろう。その点、冬季は夏季ほどの服装の相違がないため、体感的な差は少ないかもしれない。
  服装だけではなく空調区画毎でもビル内の位置が違えば日射条件も違う。人数が違えば輻射熱も違う。老若男女でも温度の感じ方が違って来るのだから、誰を基準として室温を決めるのかが難しい。ビル内の人が全員、同じレベルの快適性を求めても無理な話なのだが、差を縮める調整は必要だ。
 センサー温度に頼るのではなく、ビル内を歩いて廻り、自分の肌で冷暖房状況を感じ取ることが大切であろう。服装を見たうえで、扇子等で煽いでいる人が居るのか、汗をかいている人が居るのか、汗を拭いている人がいるのかをチェックするのだ。
 暑くなくても「暑い」と言うことはできるが、暑くないのに汗をかくことはできない。背広姿で汗もかいていない人の「暑い」というクレームに対応する必要はないだろう。

2、クレーム

 自社ビルならば社員に我慢をさせることもできるが、商業ビルではお客様から暑いというクレームがあれば、クレームを優先して冷房温度を下げる場合もあるだろう。しかし厚着の人のクレームを優先すれば、寒く感じる人が多くなり、この人達はクレームを言わずに我慢することになる。冷房温度が少し低くても、商業ビルではこのようなものなのかと思って我慢をするのである。
 ビルの管理者が設備管理員に絶対にクレームの無い空調をおこなうように言うこともあるだろう。ビルの設備管理員にとってクレームの来ない空調をおこなうことは非常に簡単である。温度的に余裕のある冷温水を多めに流しておいて、空調設定温度を24℃ぐらいに設定し、あとは空調機の温度制御に任せておけばよいだけだ。これでクレームが来るならば、その区画の温度設定を少しだけ変えればよい。あとは空調温度のことは何も考えなくてもよいのだから、これほど楽なことは無い。
 しかし、これでは余裕のない熱供給を目的とした熱源チューニングができる訳がない。設備管理員にとっては、一日に数件のクレームが来る空調をおこなうようにと言われれば非常に難しい。冷房時には厚着の人や日射の当たる窓の近くに居る人の一部からクレームが来るような空調をおこなわなければならないからだ。
 
 
 在室者を見たうえでの微妙な室温調整、余裕のない冷温水温度と流量の設定、まさに紙一重の調整をしなければならない。設備管理員も常時空調状態に目を配らなければならず、これほど技術と手間を要求されることはない。
 クレームの来ない空調をおこなっている設備管理員を優秀な技術者と思うのか、一日に数件のクレームが来る紙一重の空調をおこなっている設備管理員を優秀な技術者と思うのかは、ビルのオーナーと管理権原者次第であるが、紙一重の空調のほうが省エネになることは間違いないであろう。

3、空調区画

 事務所ビル等はいくつもの部屋で区切られているため空調区画が分かりやすい。同じ空調機ならば給気温度は同じであるが、各室内の空調負荷は窓、方角、人数、OA機器などによっても違ってくる。VAVによる変風量で給気量を制御していれば部屋毎の温度差はある程度抑えられるだろうが、定風量ではそうはいかない。季節毎の空調負荷を考えながらダンパーでの給気量調整は必須だろう。
 空調機の還気温度が分かっていても、それはその空調区画の平均温度であり、部屋の室内温度を表しているわけではない。空調区画内の各所にある温度センサーで計測している場合もあるだろうが、近くにOA機器等があれば温度は高く表示され、温度センサーは窓の近くには設置されていないので、センサー温度よりも夏季の窓側は暑く、冬季の窓側は寒くなってしまう。
 夏季に人数の多い部屋は暑いので既定の室温を維持する努力が必要であるが、冬に人数の少ない部屋が寒いからと言って規定の室温まで上げる必要があるかは難しいところである。暖房は服装である程度は寒さを防げるので、少人数の部屋は既定の室温に達していなくても、ある程度の我慢が必要かもしれない。空調条件の悪い100人が居る部屋を基準とした熱の供給ならばよいが、1人しか居ない部屋を基準とした熱の供給をおこなえば、1人のために多大のエネルギーを使うことになる。
 空調条件が悪い、少人数の部屋を基準にしたのでは、熱源チューニングをおこなう意味がないのだ。

4、空調負荷

 空調条件を全て考慮に入れた上でのビル全体の冷暖房状況を把握しなければならないが、ビルの設備管理員ならば当然に把握できているはずだ。
 冷房にとっては南側や西側に窓のある部屋が最も空調負荷が高く、暖房にとっては北側に窓がある部屋が最も空調負荷が高くなる。空調負荷の変動が少ない部屋は窓のない部屋であろう。このように季節によっても、窓の有無や方角によっても空調負荷が変わるのだから、余裕のない熱の供給をおこなうといっても簡単ではない。
 室内の給気口にあるダンパーで給気量を季節毎に調整して、室内での温度のバラツキを無くしながら、必要に応じてファンコイルを運転したい。ファンコイルを常時運転する必要はないのだ。
 商業ビルのように、部屋毎に区切られていない一つの広い空調区画の場合は、場所毎の温度差が大きくなるだろうから調整も難しくなる。
 熱源機械室から最も遠方にある空調機は、冷温水流量が不足する熱供給条件の悪い空調区画となる。日射がある空調区画は冷熱負荷が多く、日射のない区画と比較すれば冷熱供給量が不足する冷房条件の悪い空調区画である。冷水出口温度を下げると同時に往還ヘッダ差圧を上げて冷熱供給量を増やせばよいのだが、冷房条件の悪い空調区画に冷水温度と流量を合わせたのでは、冷房条件の良い空調区画の空調機にまで必要以上の冷水を流す結果となる。それでは熱源チューニングができなくなるので、冷房条件の悪い空調区画の冷房負荷を減らすために、遮熱や断熱、照明発熱の対策等を行いたい。同じ空調区画内でも冷房の効きが悪い場所があるならば、その場所への給気量を増やす工夫や区画全体の気流を考えた調整を行う必要もある。空調条件の悪い部屋に合わせた冷暖房をするのではなく、若干の温度差が生じても、どこまでなら我慢できるかを考えた調整をしたい。

5、温度差

 同じ室内であってもドアが開いているのか閉まっているのかでも気流の強さや方向が変わり、窓が少し開いているだけでも変わってくるので、室内温度が全て一様になる訳もないが、できるだけ場所毎の温度差が小さくなるように調整しながら、最も空調条件の悪い場所に合わせて冷暖房状況をチェックしなければならない。
 各場所の温度差が小さくなるように努力して調整しているビル。努力はしているが調整が難しく、仕方なく空調条件の悪い場所に冷温水温度を合わせているビル等いろいろあるだろうが、空調区画内の温度が1℃以内に抑える努力は必要だ。冷房ならば28℃~27℃の範囲に収まればよいが、28℃~26℃ではクレームが増えることだろう。
 上手く温度差の調整ができないならばファンコイルの使い方を考えてほしい。ファンコイルが主で空調機が従となるような冷暖房では、各部屋任せの冷暖房となってしまい、温度差が大きくなるばかりである。温度差を小さくするには空調機が主でファンコイルが従となるように調整すればよい。冷暖房条件のよい場所は空調機の給気だけで冷暖房を行い、条件の悪い場所だけファンコイルを併用すれば各場所の温度差も小さくなるだろう。このように調整してから冷温水温度と流量を空調可能なぎりぎりまで余裕を無くせばよいのだ。
 空調機に流れる冷温水温度もファンコイルに流れる冷温水温度も同じ温度だが、流量は変えることが出来るはずだ。ファンコイルへの流量は各場所の温度差をなくすに必要な最低減の流量になるように調整すればよい。
 各場所の温度差が出来るだけ小さくなるように調整したうえで、余裕のない熱供給を目指すのが、熱源チューニングである。

ビルの省エネ指南書(46)

熱源機械室のチューニング〔其の10〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

1.冷水出口温度
 冷水温度が16℃でも室温が設定温度まで下がるのならば、それよりも低い温度の冷水は必要ない。
温水温度が30℃でも室温が設定温度まで上がるのならば、それよりも高い温度の温水は必要ない。
必要以上の温度の冷温水を流せば、それだけ無駄も生じるので、冷暖房に必要なぎりぎりの温度の冷温水を流すことが省エネに繋がる。そのほうが熱源設備の効率も良くなり、放熱も少なくなり、ファンコイル等での無駄な冷暖房も減るからだ。
 
特に冷房の場合は冷水温度が低いほど、除湿による冷熱使用量が増えるため、できるだけ冷水温度を高くして、湿度を下げない冷房を行った方が、冷熱使用量が減って省エネになる。このことは「不快指数冷房」の項目で詳しく説明しているので読んでいただきたい。冷房の場合は最低限必要な冷水温度を見つけ出し、冷房負荷の大きな変動には、その時々に応じて冷水温度の設定を変えてもよいが、それ以外はできるだけ流量を変えて対処するようにしたい。
これには熱源の冷温水出口温度と往ヘッダの吐出温度が同じでなければならないが、両社の温度が違う場合もあるということを考えておかなければならない。15℃の冷水を流しているつもりが、実際はもっと高い冷水温度になっていたとしたら、室内温度を維持できず、クレームの元となってしまうだろう。ここが室温調整の難しいところだ。

2.熱源出口温度と往ヘッダ出口温度
 熱源の冷温水出口温度と往ヘッダの出口温度が同じ温度にならないという経験があるだろうか。
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 何故同じにならないのかを図で説明する。ポイントは一次側往還ヘッダのバイパス管だ。
冷水の場合で説明すると、前図のように熱源から出た冷水が一次往ヘッダ⇒バイパス管⇒一次還ヘッダ⇒熱源と半時計回りに回るのならば良いのだが、このようにはならず、次の図のようにバイパス管を流れる向きが、先程とは逆に左から右に向って流れることがある。空調機を通って温度が上がっている還水が、一次還ヘッダからバイパスを通って、直接一次往ヘッダに流れるのだ。
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つまり一次往ヘッダには熱源出口からの冷水とバイパス管からの還水が混ざって、熱源出口温度よりも水温が上がってしまう。
このようなことになれば、熱源設備の冷水出口温度を冷房可能なぎりぎりの水温に設定すると、熱供給量が不足することも考えられる。それではなぜこのような事になるのだろうか。

3、一次ポンプと二次ポンプの吐出量差
ポンプ1台>二次ポンプ1台となっているであろう。一次ポンプの台数が2台で、二次ポンプの台数が4台ならば、一次ポンプ1台の定格吐出量が二次ポンプ1台の定格吐出量より多くて当然だが、定格ではなくて吐出量だけでみれば、一次ポンプ1台吐出量=二次ポンプ2台吐出量になるかといえばそうともいえない。一次ポンプの定格吐出量が1.000㎥/min、二次ポンプの定格吐出量が0.500㎥/minと仮定すると、一次ポンプ1台吐出量=二次ポンプ2台吐出量が計算上は成り立つのだが、ポンプの吐出量は吐出弁の開度によっても違い、ヘッダでの圧損もある。一次ポンプも二次ポンプも台数制御であれば、運転台数も違ってくる。インバーターによる流量制御であれば周波数の変化もあり、一次側と二次側の管路抵抗でも吐出量が変わるので、一次側吐出量=二次側吐出量になることはまずなく、その時々に応じて一次ポンプ側が多くなったり二次ポンプ側が多くなったりすることになる。
一次ポンプが1台運転時に、二次ポンプが3台運転になれば、一次側吐出量<二次側吐出量になる可能性が高いが、それでは二次ポンプが2台運転時では、一次ポンプ1台吐出量≦二次ポンプ2台吐出量になるのだろうか。

4、定格吐出量
 「二次ポンプ吐出バルブ開度」の項目で説明しているように、二次ポンプは定格以上の吐出量になることがあり、2倍以上の吐出量になった例もある。余裕をもった設計による全揚程と実際の全揚程が違えば、吐出量も変わってくるからだ。
一次ポンプの定格吐出量が1.000/min、二次ポンプの定格吐出量が0.500/minであったとしても、一次ポンプ1台吐出量<二次ポンプ1台吐出量になることもあり得るのだ。このようなことになれば、二次ポンプ2台運転時の一次側往還ヘッダバイパス管には、その差分の還水が図の左から右へ向かって、一次還ヘッダから熱源を通らずに直接一次往ヘッダへ流れていくことになる。
図を例として、一次ポンプの定格吐出量が1.000/min、二次ポンプの定格吐出量が0.500/minならば、二次ポンプ2台運転で丁度よい吐出量バランスになるように思えるが現実はそうではない。
これでは定格吐出量は当てにならないと思われるかもしれないが、その通りである。定格吐出量よりも実際の吐出量で一次ポンプ側と二次ポンプ側の流量バランスを考えなければならないのだ。
仮に、二次ポンプ側が一次ポンプ側の2倍の吐出量であったとすると、熱源冷水出口温度12℃、還水温度16℃の時は半分の流量がバイパスするので、12℃と16℃が混ざって14℃になる。14℃ならばまだよいが、熱源冷水出口温度15℃で一次側往ヘッダ出口温度17℃になったとしたらどうであろうか。冷房には厳しい冷水温度だろう。
一次側往還ヘッダバイパス管に流れる冷水の方向が左から右ではこのようなこともあり得るので、吐出量が、一次ポンプ側≧二次ポンプ側となるような熱源設備運転と二次ポンプ側の流量調整が重要となる。一次側往還ヘッダバイパス管を流れる冷水が左右どの方向に流れているのかが分かり難いが、熱源出口温度と一次側往ヘッダ出口温度を見れば判別できるだろう。

5、冷水温度のコントロール
 一次側吐出量<二次側吐出量になることを逆に利用することもできる。熱源設備の冷水出口上限温度が12℃の時、もっと高い温度の冷水を流したい場合にこの方法を使えば、13℃~14℃の冷水を流すことも可能となる。熱源の冷水出口温度を何℃にすれば、二次側に何℃の冷水を流せるかを想定して冷水出口温度を決めるのだ。
このような場合でも熱源設備の運転には気を付けたい。熱源運転台数を必要以上に減らした結果、熱源の冷凍能力よりも冷房負荷のほうが多くなれば、冷凍能力不足となって冷水設定温度を維持できず冷水出口温度が上がってくる。二次ポンプ側の流量が増え、一次ポンプ側吐出量<二次ポンプ側吐出量となり、一次側往還ヘッダバイパス管を冷水が左から右へ流れることになる。その結果、さらに一次往ヘッダの冷水温度が上がってくる。
このように熱源設定温度<熱源出口温度<一次往ヘッダ温度になるようでは、実際に流れる冷水温度は冷房負荷による成り行き次第となってしまい、余裕のない冷水温度に設定することができない。
一次ポンプや冷却水ポンプの節電になるように思えるが、これでは熱源設備の効率が悪くなり、トータルでは省エネにならないはずだ。
あくまでも熱源設備の能力は冷房負荷以上になるように余裕をもった運転をしながら、冷水温度をコントロールしなければならない。熱源設備1台に100%以上の負荷をかけて冷水温度を上げるのではなく、2台を50%程度の負荷になるようにして、冷水設定温度を上げた運転をおこなうのだ。
余裕のある冷凍能力で、常に変動する冷房負荷に対して、余裕がゼロとなる熱供給をおこなう、冷水温度と流量のチューニングがポイントである。

 

 

「安全衛生推進者養成講習」のご案内

第3次産業においては、労働者が年々増加していることに比例して、全体の労働災害発生件数に占める割合が増加しているため、最重要業種として労働環境の改善をはじめとする労働災害発生件数を減少させるための取り組みを強化していくこととなっており、ビルメンテナンス業においても集中して取り組んでいくことが必要となっております。
労働災害発生件数を減少させるためには、各事業場において安全管理者や安全衛生推進者等を配置することにより労働安全衛生に関する管理体制を充実させるとともに、従事する労働者一人ひとりが安全意識を高め、労働災害の発生を未然に防ぐために努力を図っていく必要があります。
清掃業において、常時10名以上50名未満の労働者を使用する事業場では、労働安全衛生法第12条の2に基づいて、事業場ごとに安全衛生推進者を選任し、配置することが義務付けられております。
このたび一般財団法人建築物訓練センターによる「安全衛生推進者養成講習」が福岡で開催されますのでご案内申し上げます。

1.日時  平成27年5月14日(木)~15日(金)
両日とも10時から17時まで

2.会場  福岡県立ももち文化センター(ももちパレス)
福岡市早良区百道2-3-15

3.受講料 15,120円(税込み)

4.定員  40名(定員に達し次第締め切り)

5.申込期日  平成27年4月13日(日)

*案内のチラシおよび参加申込書はこちら→