投稿者「福岡ビルメンテナンス協会」のアーカイブ

ビルの省エネ指南書(45)

熱源機械室のチューニング〔其の9〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

⑥   往還ヘッダ差圧
 1、差圧による流量調整

この図の搬送設備は往還ヘッダ差圧によって二次側への冷温水流量を調整している。
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インバーターによる回転数制御と台数制御を併用して、設定したヘッダ差圧にするのだ。

負荷が減少して差圧が上がれば、往還ヘッダ自動バイパス弁が開き、往ヘッダの圧力を還ヘッダへ逃がして差圧を調整することもある。

往還自動ヘッダバイパス弁が全閉時に差圧が不足していれば、インバーターの周波数が上がり、周波数が設定上限に達した時点で差圧が不足していれば、台数制御によりポンプの運転台数が増える。

差圧設定を下げれば流量が減るので、冷温水の往還温度差が大きくなり、搬送動力が少なくて済むのだが、往還ヘッダ自動バイパス弁が開きやすくなるということでもあるので注意したい。

台数制御と回転数制御と往還ヘッダ自動バイパスの連携が上手くできていないビルも見受けられるが、冷暖房負荷のピーク時には何台のポンプが何Hzで運転して、負荷が少なくなればポンプ1台が何Hzで運転すれば、往還ヘッダ自動バイパス弁が開くことがないという調整が必要だ。

2、循環方式

差圧を下げて流量を少なくすれば、搬送動力の省エネになるのだが、循環方式によっては流量が不足することがあるので、循環方式も考えて差圧を設定しなければならない。

ファンコイルは系統毎でのリバースリターンが一般的だが、空調機の場合はダイレクトリターンになっていることも多く、管理するビルがどちらの循環方式なのかを調べて欲しい。竣工図を見ても分かるが、空調機械室でも分かる。
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写真は空調機械室の冷温水配管である。一番右が上方向への往配管、右から二番目が上方向への還配管、三番目が下方向への還配管。還配管が上下方向へ2本あるのが分かる。これがリバースリターンだ。還配管が下方向へ1本しかなければダイレクトリターンとなる。

このビルの場合は熱源機械室が地階にあるので、往還配管がこのような上下方向になるが、熱源が屋上にあれば循環方向が上下逆になることは説明するまでもないだろう。

ビルによっては両方の循環方式を併用している場合もあるので気を付けたい。途中までがダイレクトリターンで、そこから先がリバースリターンという場合やその逆もあるのだ。

3、ダイレクトリターン

空調機毎に往還配管の長さが違っている。

下の図では熱源に最も近い一番下の空調機が最も短く、一番上の空調機が最も長い配管長となる。

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配管長が短ければ短いほど管路抵抗が減るので、その空調機への冷温水は流れやすくなる。

差圧が高くて流量が充分に多ければ管路抵抗はそれほど問題にならないが、搬送動力を減らすために差圧を低くすると、管路抵抗の多い空調機への冷温水流量が不足して、抵抗の少ない空調機の二方弁が閉まって、二次側流量に余裕が出るまでは冷暖房の効きが悪くなることがある。

このような場合は最も管路抵抗の多い空調機を基準として運転開始時間と差圧を考えていけばよい。

遠くにある空調機から運転を始めて、時間差をとって順番に運転するような工夫が必要となる。

または冷暖房負荷に応じて差圧を変えていくという方法もある。空調機運転開始時は高めの差圧にして、室温が設定値に近くなれば差圧設定を下げていくのだ。冷暖房負荷に応じて流量を変えるのは少々手間がかかるかもしれないが、熱源機械室は設備管理員が頻繁に足を運ぶ場所でもあるので、できないことはないだろう。

冷暖房負荷が少なくなっているのに、高い差圧のまま運転する無駄を無くすことが大切である。

手動のバルブを絞って流量差を調整することもできるが、バルブを絞れば抵抗を増やすことにもなるので、基本的には手動のバルブは全開にしたい。

4、リバースリターン

空調機毎の往還配管の長さが等しくなっている。

4台の空調機への管路抵抗が等しくなっているので、冷暖房負荷の多い空調機を基準として差圧を決めればよい。
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差圧は低いほうが配管抵抗と搬送動力が減少するが、低過ぎると冷暖房ピーク時には空調負荷の多い空調機への冷温水流量が不足するため、空調負荷に応じた最適な差圧に調整するのだ。

リバースリターンであっても、負荷に応じて差圧を変更して流量を調整することがベストではあるが、それだけ設備管理員の仕事量が増えることにもなる。冷暖房ピーク時も含めて、年間を通して運用ができる、出来るだけ低い差圧設定に固定できればベストではある。

5、系統毎のダイレクトリターン

下図ではリバースリターンが2系統描かれている。

しかしリバースリターンだからと云って安心はできない。各系統内の4台の空調機はリバースリターンではあるが、右側系統と左側系統の系統別で見れば、ダイレクトリターンとなっていることが分かるだろうか。明らかに右側系統の方が、往還配管が長くなっているので配管抵抗が違ってくる。
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このような場合は、右側系統の冷暖房負荷が多い空調機を基準として差圧を決めなければならない。

リバースリターンだからと云って、8台全ての流量が均等になる訳ではないのだ。

ビルは縦方向の配管長よりも、横方向の配管長の方が圧倒的に長い。特に建築面積の広いビルの場合は高さよりも幅と奥行はそれ以上なので、系統別の配管長はかなり違ってくる。

10階建のビルを例とすると縦方向の配管は30mそこそこであるが、横方向はもっと長いはずだ。

各系統の中央にヘッダを置いているビルもあるが、よく考えられたレイアウトと云える。

空調機とは逆にファンコイルはフロア毎の横方向のリバースリターンで、フロア別の縦方向はダイレクトリターンが多い。この方が空調機よりも系統別の配管抵抗の差は少ないと云える。

循環方式を考え、管路抵抗を考え、空調負荷を考え、搬送動力節減を考えながら、最も無駄のないヘッダ差圧に調整してほしい。

『都市ビル環境の日』第8回子ども絵画コンクールのお知らせ

公益社団法人福岡県ビルメンテナンス協会では、1995年より毎年10月4日を『都市ビル環境の日』と定め、様々な環境問題改善や都市の美化活動に積極的に取り組んでおります。当協会では、これらの活動をもっと多くの方々に理解して頂きたく、今回、第8回目の「子ども絵画コンクール」を企画致しました。このコンクールが次の世代を担う子どもたちの心に「環境」や「もの」を大切にする気持ちが育まれる契機となることを願っています。

・応募資格:福岡県内の小学生  ・応募期間:平成27年8月1日(土)~9月11日(金)

・応募要領および応募用紙はこちら→

特定建築物に係る個別管理方式の空気調和設備の加湿装置及び排水受けの点検等について

建築物衛生法では、第3条18号3号及び4号において「空気調和設備の加湿装置及び排水受けの点検を1か月以内ごとに1回、定期に、その汚れの状況を点検し、必要に応じ、その清掃及び換水等を行うこと」としています。

今般、厚生労働省より、事業者の負担軽減のために運転状況またはセンサーの有無等によって緩和措置が設けられました。

詳細につきましては、添付資料をご確認くださいますようお願いいたします。

・通知文書はこちら→

「ビルメン ヒューマンフェア’15 in 北海道」 講演&セミナーのお知らせ

「ビルメンヒューマンフェア’15in北海道」が9月15日・16日の2日間、北海道の札幌市で開催されます。
別添のフェアパンフレットにございますとおり、多彩なイベントが開催されます。
なお、セミナーに関しましては、事前登録制となっております。

*フェアパンフレットはこちら⇒

*フェアセミナー申込書はこちら⇒

「ビルメン ヒューマンフェア’15 in 北海道」のお知らせ

ビルメンヒューマンフェア’15in北海道が下記のとおり開催されます。また、第5回アジアビルメンテナンス大会も同時に開催されます。

1.開催日時   平成27年9月15日(火)~16日(水)

2.開催場所   札幌コンベンションセンター
札幌市白石区東札幌6条1丁目1-1

・チラシはこちら→

平成27年度第2回福岡PPPプラットフォームセミナー&第1回九州PPPセミナーの開催について

今年度の第2回目「福岡PPPプラットフォームセミナー」と第1回九州PPPセミナーが開催されます。
なお、今回のセミナーは少人数の定員として、2日に分けて開催されます。両日とも同じ内容のセミナーとなります。

(1)福岡PPPプラットフォーム“平成27年度 第2回セミナー” (福岡市主催)
・開 催 日   1日目:平成27年9月29日(火) 13:00~14:40〔*12:30より受付開始〕
2日目:平成27年9月30日(水) 13:00~14:40〔*12:30より受付開始〕
・会    場    福岡ビル9階大ホール
〔福岡市中央区天神1-11-17〕
・プログラム   ①「民間提案・発案制度改善の説明」
②「PPPによる公園管理・運営に関する調査研究について」
③公園をテーマにした“民間提案・発案”のシミュレーション
・定    員    各日(1日目、2日目)先着50名  *各社2名以内
・参加資格    福岡市内に本店を置く公共建築物の整備・運営に関連する企業
・参 加 費    無料
・申込締切     平成27年9月18日(金)17時必着

(2)第1回九州PPPセミナー
・開 催 日   1日目:平成27年9月29日(火) 15:00~16:00〔*14:30より受付開始〕
2日目:平成27年9月30日(水) 15:00~16:00〔*14:30より受付開始〕
・会   場   福岡ビル9階大ホール
〔福岡市中央区天神1-11-17〕
・プログラム   ①講演「都市の公園を活用した官民協働事業について」
②講演「パブリックスペースのマネジメントを通じた地域の活性化について」
・定    員    各日(1日目、2日目)先着100名
・参加資格    なし
・参 加 費    九州PPPセンター会員:無料
福岡PPPプラットフォーム平成27年度第2回セミナー参加者:無料
上記以外:5,000円
・申込締切    平成27年9月18日(金)17時必着
・主   催    九州PPPセンター

  ◎案内チラシおよび参加申込書はこちら⇒

ビルの省エネ指南書(44)

熱源機械室のチューニング〔其の8〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

熱源機械室のチューニング(8)

⑤    往還ヘッダ自動バイパス弁

1、往還ヘッダ自動バイパス弁の位置

往還ヘッダ自動バイパス弁は、往還ヘッダ間上の高い位置にあることが多い。そして見難い位置にあったり、指針が確認し難い型式であったりと、開度を確認するのが大変な場合も多い。
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 この写真の場合はポンプ上部の前後に設置されている往還ヘッダの間隔が狭く、さらに上部の非常に確認し難い位置に、指針が確認し難いバイパス弁がある。二次ポンプ№1と二次ポンプ№2の吸込側縦配管の間にある、矢印で示す狭い隙間から体を中に入れて、2台のポンプ間に立って上を見なければ開度が確認できない。天井灯もないのでライトも必要だ。あまり褒められた位置にある往還ヘッダ自動バイパス弁とはいえない。

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その点、上の写真にある往還ヘッダ自動バイパス弁は非常に見やすい位置にある。

高い位置ではあるが機械室内の通路からも確認でき、指針も赤色なので一目で確認できる。

配管の下まで行けば次の写真のようにはっきりと目視で開度まで確認ができる。

このバイパス弁の位置は褒めてもよいだろう。

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皆さんが管理しておられるビルでも、このように指針が確認できるだろうか。往還ヘッダ自動バイパス弁がどこにあり、開度がどのようになっているのかを確認してほしい。

全開の位置と全閉の位置に印を付けたり、指針の先端の色を黄色などの明るい色に塗り替えて一目で開度が分かるようにするのも良いだろう。

簡単に確認ができない位置だと省エネチューニングが完了するまでは大変であるが、自動バイパス弁が常時閉まるようになれば、その後はそれほど見る必要もなくなるので、チューニングが終わるまでの辛抱と思って頑張ってほしい。

2、開度のチューニング

往還ヘッダ自動バイパス弁が開くのは、空調負荷が減って空調機の二方弁が閉まり、往ヘッダの圧力が高くなる時である。圧力を逃がすためにバイパス弁が開くのだが、インバーターがあるのならば最低周波数を低く設定して台数制御と回転数制御によりヘッダ圧力を下げたほうが省エネになる。

何度も説明するが、バイパス弁が開くと冷水が二次ポンプ⇒往ヘッダ⇒バイパス弁⇒還ヘッダ⇒二次ポンプというように二次ポンプ廻りを無意味に循環するだけとなり、その都度、二次ポンプとの摩擦により冷水が温められてしまうということを常に頭に入れておきたい。電力を使って冷水に熱を与えるほど無駄なことはないため、チューニングをおこないながら、往還ヘッダ自動バイパス弁ができるだけ開かないようにしてほしい。

冷暖房ピーク時は簡単かもしれないが、中間期やビルの営業時間外で空調負荷が少ない時のチューニングが難しい。空調負荷が少なくなれば流量も少なくなり、ポンプ1台運転時に運転周波数を下げてもヘッダの圧力が上がってしまう。

しかし、このような空調負荷が少ない時こそがチューニングのチャンスでもあり、このような時でないとチューニングはできない。

空調負荷の多い時に、往還ヘッダ自動バイパス弁が全閉になるようにチューニングするのは簡単であるが、空調負荷が少なくなった時に全開になるようでは、上手くチューニングできているとは云えないので、空調負荷が少ない時でも、できるだけ開度が小さくなるようにチューニングするのだ。

どこまで開度を小さくできるかは、チューニングをおこなう設備管理員の努力次第である。

3、定回転ポンプでのチューニング

最大流量的には定回転ポンプは回転数制御の場合よりもポンプ1台当たりの容量が小さく、その代わりに設置されている台数が多いはずだ。台数が多ければ回転数制御で流量を可変できない代わりに、台数制御で若干の流量制御ができる。

容量の小さい二次ポンプが1台しか運転していない時であっても、空調負荷が少なければ、往還ヘッダ自動バイパス弁が、ある程度開くことは仕方がないが、開いているのならば、冷温水出口温度を変えて、自動バイパス弁ができるだけ閉まるように調整することはできるはずだ。

ポンプが2台運転している場合などに、往還ヘッダ自動バイパス弁がかなり開いていれば、全閉になるようにチューニングできれば、ポンプは1台運転でも十分だろう。

台数制御を上手く駆使してほしい。

4、往還ヘッダ手動バイパス弁

手動バイパス弁の場合も考えてみよう。

空調機への流量を三方弁で制御する場合や、流量制御ではないファンコイルは定流量となるので、ヘッダ圧力を自動制御する必要がなく、往還ヘッダバイパス弁は手動となっているだろう。

次の写真は吸収式冷温水発生器の一次側往還ヘッダの間にある手動バイパス弁である。

非常に見やすく分かりやすいレイアウトであり、手が届く高さなので脚立に昇らなくても調整できる点など、設備管理員にとってはチューニングがおこない易いバイパス弁である。この往還ヘッダ手動バイパス弁の位置も褒めてよいだろう。

往ヘッダに直接、空調機系統やファンコイル系統への二次ポンプが繋がっているので、二次側の往ヘッダは無い。この場合は熱源チューニングとはまた別のバイパス弁チューニングとなる。

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5、手動でヘッダ圧を調整

写真を見ても分かるようにバイパス弁がかなり絞られている。バイパス弁を閉めれば、一次ポンプの吐出圧が往ヘッダから還ヘッダ側に逃げる量が少なくなるので、ファンコイル系統のポンプを停止させて、バイパス弁で往ヘッダの圧力を調整しながら、一次ポンプの吐出圧を利用してファンコイル系統に冷温水を流すことができる。

少ない流量でよい時はバイパス弁を開いて圧力を下げ、多めの流量が必要な時はバイパス弁を閉じて圧力を上げるのだ。

定流量のファンコイルは各室が自由に熱を使うことができるので、必要以上の冷暖房になることが多いが、このようにしてファンコイル系統へ送る冷温水の流量を、部屋の温度を見ながら手動で調整すれば、無駄な冷暖房を防止できるだろう。

冷温水が定流量のファンコイルに流れるのならば、バイパス弁がかなり閉まっていても、吸収式冷温水発生器が流量低下になることは無いが、変流量の場合は閉め過ぎないように注意が必要である。

自動であっても手動であっても、バイパス弁は重要なチューニングポイントなのである。

 

ビルの省エネ指南書(43)

熱源機械室のチューニング〔其の7〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

熱源機械室のチューニング(7)

④   インバーター最低周波数

二次ポンプがインバーター制御でなければ、この項目は飛ばして次の項目へ進めばよい。

1、インバーターの活用

インバーター制御であれば、インバーターが有効な設定になっているかを確認することから始めよう。50Hzや60Hzのような商用周波数で動いているインバーターでは有効な設定とはいえない。

商用周波数で定格電流のまま運転しているポンプのインバーターは意外と故障が多いので、低回転で運転できるように最低周波数の設定を変えたい。

インバーター制御ポンプが1台にしろ、全台にしろ、インバーターの周波数が下がらないような設定で運転していたのでは、インバーターの省エネ性を生かすことはできない。

インバーターの周波数が下がらなければ、負荷が少ない時は空調機の二方弁が閉まるとヘッダの圧力が上がり、往還ヘッダ自動バイパス弁が開く。これでは定回転ポンプと同じである。インバーターを十分に活用できているとはいえない。

インバーター制御ならば、負荷が少ない時は周波数を下げることでヘッダの圧力を一定に保ち、往還ヘッダ自動バイパス弁は閉まったままになる。

このようにヘッダの圧力をインバーターで調整できるように最低周波数を調整しなければ、インバーターを活用することにはならない。

往還ヘッダ自動バイパス弁が開き、圧力を逃がして調整するような設定では駄目なのだ。

2、インバーター最低周波数

複数台ポンプによる台数制御で1台だけがインバーター制御ならば定格周波数で運転することがあるかも知れないが、空調負荷が軽い時は周波数が低くなる設定になっているだろうか。

インバーター機器によっては最高周波数や最低周波数を設定できる範囲が違うが、できるだけ低い周波数で使う方が、ポンプの消費電力が周波数の3乗に比例するのだから、省エネ効率が良くなることは当然である。

最高周波数は台数制御により、運転台数が増えれば自動で周波数が下がるだろうが、最低周波数が高いままでは、空調負荷が少なくなっても二次ポンプの吐出量が減らず、往還ヘッダ自動バイパス弁が開いて、往ヘッダの圧力を下げることとなるので、最低周波数設定を見直す必要がある。

空調負荷が最も少ない時でも往還ヘッダ自動バイパス弁が開かないぐらいまで、周波数を下げることができればよいのだが、最低周波数設定下限値が30Hzのインバーターでは設定下限値まで下げても往還ヘッダ自動バイパス弁が開くことがあるだろう。その場合は冷水の出口温度を上げるか、温水ならば出口温度を下げて二次側流量を増やすようにすれば、往還ヘッダ自動バイパス弁が開かない方向で、ある程度の調整はできるはずだ。

3、二次ポンプ吐出量

二次ポンプの吐出バルブが少しでも閉まっていた場合、吐出バルブを開くと吐出量が増えるので、吐出量を同量にするためにインバーターの周波数が自動で下がる。このように吐出バルブを開くだけでも吐出量を維持したまま、ポンプ搬送動力の省エネができるのだが、やはり最低周波数設定値までしか下がることはない。

インバーター最低周波数の設定値が高かければ、負荷が少ない時はヘッダ圧力を回転数制御だけでは調整できずに、往還ヘッダバイパス弁が開いて圧力を下げることになる。これでは冷水は二次ポンプ⇒往ヘッダ⇒往還ヘッダ自動バイパス弁⇒還ヘッダ⇒二次ポンプの順でポンプと往還ヘッダ間を廻るだけとなり、ポンプ動力を無駄な循環に使っているだけになる。この無駄を無くす調整だということを常に頭の中に置いておきたい。

このような循環は摩擦熱が増える要因となるので、省エネチューニングをすることで冷熱と搬送動力の省エネ効果は想像以上に大きなものとなる。

省エネチューニングの結果、冷熱損失が減少すれば冷水出口温度を高くすることができる。冷水出口温度を高くすることができれば冷凍機等が熱源の場合は冷凍機効率も良くなり、空調機での除湿量も減るので、冷熱使用量はさらに減るはずである。一つが良くなれば次々と良くなる。正に好循環である。この好循環に導くのが熱源機械室省エネチューニングの目的である。

同じ項目のチューニングを何度も繰り返して行い、満足のいく点を探し出していただきたい。

4、3台の二次ポンプとインバーター

 ①

この写真のポンプ設備があるビルは、冷房ピーク時の冷熱使用量が3,770MJであり、30㎾ポンプが3台運転していた。この程度の熱量ならばポンプ1台を定格周波数で運転すれば丁度よい流量であるが、冷熱負荷が少ない時は、最低周波数が45Hzと高いのでポンプ1台運転でも過大な流量になる。

省エネチューニングの結果、冷熱使用量が1,400MJまで下がったが、当然に二次側流量は減少する。

これ以上は運転台数を減らすことができないので、18Hzまで最低周波数の設定を下げて、往還ヘッダ自動バイパス弁が開かないようにしたが、これだけ低い周波数でも冷水の循環に問題はなかった。

②

5、台数制御と回転数制御

二次ポンプの台数が多ければ、予算的に1台だけがインバーター制御ということがあるが、3台程度であれば全てがインバーター制御になっていることが多いだろう。3台のポンプがインバーター制御であれば運転周波数を下げて調整することが出来るが、冷熱負荷の減少量に見合っただけ周波数が下がらなければ、結局は往還ヘッダ自動バイパス弁が開いて調整することになる。

このインバーター周波数をどこまで下げることが出来るのか。どこまで下げて使っているのか。どこまで下げれば往還ヘッダ自動バイパス弁が開かなくなるのかがチューニングのポイントだ。台数制御と回転数制御をスムーズに連携させて、最も搬送動力が少なくなる流量制御を目指してほしい。

空調負荷の少ない時期の、少ない時間帯に合わせて、インバーターの最低周波数を、往還ヘッダ自動バイパス弁開度を見ながら、数年かけるつもりで下げていけばよい。急いで下げる必要はない。

インバーターの取り扱い説明書をみれば、周波数の許容設定範囲が書かれているはずだ。例えば30Hzが最低であれば30Hzにするしかないが、30Hz以下に設定できるインバーターであれば、30Hz以下は、1Hzずつ様子を見ながら下げていきたい。モーターが共振する可能性もあるので、安全を確かめながら下げていくのだ。

このように空調負荷が最も少ない時でも、往還ヘッダ自動バイパス弁が開かなくなるように、インバーター最低周波数を少しでも低くできれば、それだけ搬送動力の省エネになり、電力と冷熱の省エネだけではなく、電力デマンド低減効果も大きなものとなるだろう。

6、モーターの冷却

モーターには冷却ファンがあり、周波数が下がれば冷却ファンの回転も下がるので、モーターの冷却に支障があると思うかもしれないが、モーターの消費電力が周波数の3乗に比例して下がるのだから、冷却効果が下がる以上に発熱が減ることになる。モーターの表面を手で触ってみればよく分かるだろう。商用周波数で運転しているポンプのモーターは熱くてとても触れたものではないが、30Hz以下になるとずっと手を置いておける温かさだ。この温度差を実感できれば、できるだけ低い周波数でポンプを運転したほうが、インバーターとモーター本体にも良いことが分かるはずだ。

モーターの冷却を心配する必要はないのだ。

ビルの省エネ指南書(42)

熱源機械室のチューニング〔其の6〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

熱源機械室のチューニング(6

③二次ポンプ台数制御増段値

11、往ヘッダでの圧損

往ヘッダでの圧損とはどのようなものなのか。

ポンプの場合は主として吐出弁を閉めて、水の出口を塞ぐと圧損が発生するが、往ヘッダの場合はヘッダ出口のバルブを閉めるだけではなく、ヘッダの形状・容量・流量等やポンプの運転状況によっても圧損が生じる原因となる。

ヘッダ内での水の流れが悪ければ圧力が高くなり、圧力が高ければ圧損も増えるだろう。

この圧損があるから、ポンプが複数台運転時のヘッダ吐出量は、ポンプ1台の吐出流量×運転台数にはならず、かなり減少した流量になってしまう。

ヘッダでの圧損を減らすにはどうすればよいのかを図で説明するが、ヘッダは千差万別である。

ヘッダが千差万別ならば、そのヘッダに合ったアイデアがビルの設備管理技術者一人ひとりに湧いて出て来るようになってほしい。

台数制御、流量制御、圧力制御等の自動制御任せにするのではなく、チューニングを行いながら、自動制御を上手くコントロールすることも設備管理技術者の仕事であり、ヘッダ内でどのように水が流れるのかを想像して、最も効率の良い台数制御をおこなうことも設備管理技術者でなければできない仕事なのだ。

12、左右対称のヘッダ

実際は系統毎の吐出側配管や往還ヘッダバイパス管もあるだろうから、このような図にはならないかもしれないが、ヘッダ内の水流を考えるには分かりやすい図である。

  ポンプが②の一台運転ならば、ヘッダに入った水がそのまま真向いのヘッダ吐出口から出ていくのでヘッダでの圧損が最も少ないと思われる。

しかしポンプ①と②、①と③のように2台運転の時はどうなるだろうか。

ポンプ①の水が、②の水とスムーズに合流して出ていくだろうなどと思う人はいないはずだ。
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写真のポンプの吐出量は0.25㎥/minである。

これは1秒間に4.167リットルになる。

これだけの水が、決して太いとは云えないヘッダに対して直角に流入するのだから、①や③から流入した水が、抵抗も無くスムーズに曲がって中央のヘッダ出口から出ていくはずはないのだ。

ポンプ①からの水は、ヘッダに入ると対面の壁にぶつかって跳ね返りながら渦となり乱流となる。そこに新たな水が次々と流入して来て、常時ぶつかり会うのだから、スムーズに流れることが出来ずに圧損が生じて当然だ。その後ヘッダ出口方向に向かう水は、1台運転でなければ、ポンプ②や③から吐出した水にぶつかってさらに圧損が生じ、ヘッダ出口側の配管径やバルブ開度次第では、またここでも圧損が生じる。

ポンプ①と③の2台運転ならば①②や②③の2台運転よりも圧損が増えることは想像できるだろう。左右から流れて来た水がヘッダ中央で正面衝突するからだ。この場合ポンプ①がインバーターでポンプ③が定回転の場合を想像すれば、ポンプ③の吐出圧が①のヘッダ入口まで影響して、ポンプ①からの水はヘッダに入る時点でも圧損を生じてしまう。水流的にはヘッダの入口と出口は最短距離が最も効率が良いので、図のようなヘッダの場合は、ポンプ2台運転時は①③同時運転を避けるのが良いが、台数制御との兼ね合いもあるだろうから、ポンプ①or③どちらかのスイッチを「切」にして、定期的に切り替えて使うなどの工夫が必要となる。3台運転が必要ないのならば、①②か②③のどちらか2台での台数制御をおこなうのだ。

13、出口側が端に寄ったヘッダ

ポンプからの吐出配管が立ち上がって直ぐにヘッダに繋がっている。ポンプとヘッダの位置が近ければ、この図のようになるだろう。比較的小規模のビルに多いヘッダである。
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図のように出口側配管がどちらか端に寄ったヘッダは一般的には多いのではないだろうか。

この場合はヘッダへの入口と出口が最短距離にあるポンプ④が、最も圧損が少なくなるのは分かるだろう。2台運転の場合は、もう1台はどのポンプを運転するのが良いのかを考えてみよう。

前項では①②や②③のように隣接したポンプ運転が良いと説明したが、このようなヘッダの場合はできるだけ遠いポンプ①を運転するほうが良い。

隣にあるポンプ③は出口には近いのだが、それよりも遠くにあるポンプ①の方が良いだろう。

ポンプ④を停止させた2台運転ならば、ポンプ③とポンプ①が良いだろう。出来るだけ出口に近いポンプを1台運転して、2台目は運転ポンプから離れたポンプを運転するのだ。その条件から考えればポンプ①と②の2台運転は最悪である。

それでは何故、離れたポンプ同士を運転したほうが良いのだろうか。

ポンプ②からヘッダに入った水は瞬間に周囲に広がり、①や③の流入口にも向かう。特に出口側の③への影響が大きいだろう。ポンプ①から入った水の圧力は左側へは逃げることができないので、②への影響はさらに大きなものとなる。これがポンプ①と②の2台運転が最悪になる理由である。

14、入口と出口が逆方向のヘッダ

ポンプとヘッダの位置が離れていれば、この図のようにヘッダ上面のみに配管があるはずだ。大規模ビルの場合はこのような形状が多いだろう。
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このようなヘッダの場合も出口側に近いポンプを優先的に運転させ、次に①か②のポンプを運転させればよい。

ポンプ①からヘッダに入った水は乱流であっても、④の近くまで来るときには層流となっており、乱流同士がぶつかることは無いだろう。

15、インバーター制御のポンプ

これまでの説明では出口側配管が1カ所としてきたが、実際は系統別にあることの方が多いだろう。

ポンプが全てインバーターによる流量制御をおこなっていれば、水がヘッダに入った瞬間の乱流の影響は緩和されるはずだ。

しかし周波数を低く運転しても、回転数に見合ったポンプ定格吐出量×運転台数は実流量にはならない。回転数が下がってポンプ1台当たりの圧損が減る代わりに、運転台数が増えたのでは、1台当たりの圧損は減っても、全体で見れば同じような圧損量になっているからだろう。

最も効率の良い増段のアイデアを見つけるために、実際のヘッダと配管の図を描いて、同じ流量時でのポンプ運転台数と運転周波数と圧損の関係とインバーター制御の有無を考慮しながら、どのようにポンプを運転すれば圧損が少なくなるかを、台数制御の面から検討していただきたい。

 

都市ビル環境の日 第6回子ども絵画コンクール

 

 
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優秀賞
 
 
07優秀賞
 
10優秀賞
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優秀賞
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優秀賞