投稿者「福岡ビルメンテナンス協会」のアーカイブ

ビルの省エネ指南書(15)

ビルの省エネ指南書(15)

ファンコイルのチューニングポイント〔其の1

機械室(2 

5、系統毎の流量制御

冷温水温度だけではなく流量も制御できればさらに効果がある。


図-1 同一のポンプで送水

図-1のように空調機系統と同一のポンプで送水されているのならば空調機も含めた全体としての流量調整を行いながら、ファンコイル系統のバルブや各階のバルブで、空調機だけでは室温を維持できない場合の不足分を補うだけの最小限の流量に調整すればよい。

6、ポンプでの流量調整


図-2 個別のポンプで送水

図-2のように空調機とファンコイルの二次ポンプが個別にあるのならば、ファンコイル系統のみの流量を簡単に調整することができる。ファンコイル系統のポンプがインバーター制御ならばバルブで調整するよりもインバーターの最高周波数を部屋の冷房状況をみながら少しずつ下げていけばよい。

図-2のような設備構成では、一次ポンプ1台よりも二次ポンプ3台のほうが、流量が多くなるだろう。この場合は還ヘッダから往還ヘッダバイパスを通って直接往ヘッダに冷水が廻り込むために、往ヘッダの冷水温度は吸収式冷凍機からの冷水と往還ヘッダバイパスを通った還水が混合されて、少し高めの冷水温度になる。往水温度は還水温度の変化と同様に変化することになるため、一定温度の冷水が送れないという問題がある。

7、バイパスバルブでの流量調整


図-3 ファンコイル用ポンプを停止

図-3のようにファンコイル系統の循環ポンプを停止させて、一次ポンプの圧力で送水してみるのもよい。一次ポンプのほうが二次ポンプ1台よりも流量が多いだろうから、往還ヘッダバイパスには図-2とは逆方向に冷水が流れることになり、往ヘッダの冷水温度は吸収式冷凍機の出口温度と同一の温度となるため、安定した温度の冷水が送れることになる。ファンコイル系統への流量調整はヘッダのバイパス弁でおこなうのだ。バイパス弁を閉じていけば還ヘッダへの廻り込みが減るのでファンコイルへの流量が増え、開ければ廻り込みが増えて流量が減るのだ。ポンプを停めて流量調整するので、ポンプ電力が不要となる効果がある。

ビルの省エネ指南書(14)

ビルの省エネ指南書(14)

ファンコイルのチューニングポイント〔其の1

機械室(1

1、ファンコイルのあるビル

ファンコイルのあるビルでは空調機だけで空調をおこなっている部屋と空調機とファンコイを併用している部屋とファンコイルだけで冷暖房をおこなっている部屋のいずれかが考えられる。

ファンコイルは各室で自由にON・OFFや風量の調整ができる場合が多いため、どうしても過剰な冷暖房となってしまい、無駄なエネルギーを使う結果となっている。このファンコイルで使われている無駄なエネルギーを減らすだけでも大きな省エネ効果が期待できるだろう。

2、空調機の二方弁

ファンコイルには空調機に流れる冷温水と同じ温度の水が、流量制御もなく流れている場合が殆どだろう。このようなファンコイルのある部屋ではファンのON・OFF操作と風量切換だけで過冷房も過暖房も自由自在である。

電動弁による流量制御と温度センサーによる風量調整が行えるファンコイルもあるが、各室が自由に設定できるようでは、自動制御の無いファンコイルと同じことである。

この結果、空調機とファンコイルを併用している部屋ではファンコイルだけで室温の維持ができてしまうため、空調機の二方弁が閉まってしまい、ファンコイルが主で空調機が副という空調的には本末転倒なってしまうビルも数多くあるはずだ。このように主と副が逆転した場合の弊害は冬になると顕著に現れる。

ファンコイルの暖房だけで空調設定温度になると、空調機の二方弁が閉まり空調機から導入される外気が加熱されないまま還気と混ざって、室内給気口から吹き出すことになる。この場合の給気温度は室内温度以下となるために、給気口の真下にいる人は冷気を直接浴びて、非常に寒い思いをすることになる。このためにクレームがきたというビルもあるだろう。

それでは給気口からこのような冷気が出ることを無くすにはどうすればよいだろうか。

それにはファンコイルだけでは十分な暖房ができないようにすればよい。空調機の二方弁が開くように調整すれば空調機が主でファンコイルが副となる本来の姿に戻るだろう。

3、冷温水温度

冷房の場合は冷水温度を上げていったらどうなるだろうか。ファンコイルからの給気温度が上がり、ファンコイルだけでは室内冷房温度を維持することができなくなれば、空調機の二方弁が開いてくるだろう。そしてファンコイルの冷房能力が低下するに従い、空調機の二方弁が徐々に開き、最後には全開となる。二方弁が全開まで開くということは外気を十分に冷やして導入していることになる。

暖房の場合ならば温水温度を下げていけばよい。そうすれば冷房と同じように空調機の二方弁が開き、導入した外気を暖めるので、室内給気口からは必ず室温以上の暖かい空気が出るようになる。これで給気口の真下にいる人が寒いということもなくなるだろう。

このように冷温水温度に余裕を無くし、空調機だけで冷暖房できない時だけファンコイルを運転するようにしたい。

空調機とファンコイルを併用している部屋ならば、冷暖房ピーク時には空調機と併用しなければ室温を維持できない冷温水温度と流量に調整しておけば、ファンコイルだけで室温を維持できないので、空調機の二方弁が閉まることはない。これで空調機が主でファンコイルが副となる冷暖房になるだろう。

4、ファンコイル運転時間

空調機だけで冷暖房ができるのならばファンコイルを運転する必要はないので、夏季は日射の入る時間だけ運転するとか、できるだけ運転時間が短くなるようにしたい。ファンコイルの運転は必要最小限の時間にして、空調機で室温が維持できない場合だけ運転すればよい。

運転を各室任せにせず、裏で上手くコントロールするのも、設備員の腕の見せ所だ。

ビルの省エネ指南書(13)

ビルの省エネ指南書(13)

空調機のチューニングポイント〔其の3〕

中間期(2)

5、加湿冷房

総合図書館では中間期の省エネ対策として加湿を冷房に利用していた。

空気が乾燥している中間期にスプレー式の加湿をおこなうと水の蒸発効率が高く、給気温度が5℃近く下がる日もあったほどだ。

窓を開けることが出来ないビルなので外気だけでは冷房できず、空調機にも外気冷房用のバイパスがないため、冷熱も併用して冷房をおこなっていたが、加湿冷房を行うようになってからは中間期での冷熱の使用量を大幅に減らすことができた。

暖房時の加湿ならば湿度の設定が可能で、図書館内が40%以上の湿度になるよう設定しておけばよいが、冷房時は制御的に加湿ができないため、手動で加湿用の加圧ポンプを運転していた。中間期のように外気が乾燥しているのに加湿ができなければ、建物内の湿度を40%以上に維持することはできないが、水の気化熱を利用した冷房ならば湿度維持も同時にできるのだから一石二鳥である。

6、加圧ポンプ

総合図書館の加湿制御は加湿制御用のリレーがONになり、加圧ポンプのスイッチが入になっていなければ加圧ポンプが動かない構造である。中間期にも加湿するには、加湿制御用のリレーを強制的にON状態にすればよい、あとは加圧ポンプのスイッチを手動で入り切りすればよいのだ。しかし手動ではスイッチの切り忘れの可能性があるので十分に注意しなければならない。加湿冷房のつもりが、空調機が停止している時に水の垂れ流しとなっていては意味がない。このためにも加湿の自動制御は暖房時だけではなく冷房時もできるようにするべきであろう。

7、外気量

加湿冷房の調整ポイントは外気導入量の調整である。外気だけでの冷房ならばあまり考えなくてもよいが、冷熱との併用となればいろいろな条件も考慮しなければならない。

①       外気だけで冷房

②       外気と加湿を併用

③       外気と加湿と冷熱を併用

①の外気だけで冷房が可能ならば、外気導入量が多くなるようにダンパーを調整しておけばよいので簡単だ。

②の加湿も併用するとなれば外気湿度とスプレー量を考えなければならない。外気湿度が高いのにスプレー量が多くては、蒸発効率が低下して水の無駄となる。

スプレー量の調整は複数台の加圧ポンプがあれば運転台数で調整が可能だが、1台ならばノズルを減らして調整しなければならない。この方法については何れ冬季の加湿で詳しく述べるつもりである。

難しいのは③である。冷熱も併用するということは空調機の設定は外気冷房ではなく冷房になっているはずだ。当然に還気もあるが、還気は外気よりも温度も絶対湿度も高いはずであり、このような還気ではスプレーの蒸発効率が悪くなる。還気が多くて外気冷房効果や加湿冷房効果も悪くなるのならば、還気ダンパーを絞りぎみにして外気量を増やしたほうがよいが、これだけでは建物内の気圧が高くなりすぎるので、それに見合った自然排気も考えなければならない。

8、風除室

自然排気が簡単に行える場所は出入口であり、ドアが開けば必ず排気する場所である。外気侵入防止の風除室があれば二重ドアであるが、この内側のドアを開放停止状態にしておけば、これだけでも空気が流出しやすくなるだろう。

中間期に二重ドアの必要はなく、むしろ空気を積極的に逃がす場所として利用したい。

ビルの省エネ指南書(12)

ビルの省エネ指南書(12)

空調機のチューニングポイント〔其の3〕

中間期(1)

1、 外気冷房

中間期は外気をどれだけ冷房に利用できるかが決め手である。

外気冷房用のバイパスがある空調機ならば、空調機の各ダンパーは出来るだけ全開にしたい。バイパスがない空調機ならばSA、OAダンパーは全開、RAダンパーは出来るだけ閉める方向で調整が必要だろう。1年中同じダンパー開度のビルもあるが、それでは効率的な外気利用ができるはずもない。

排気に関しては熱気のこもった場所からビル内の気圧を利用して排気したほうがよいだろう。負圧のビルでは逆に熱気が下りてきて暖房になってしまう可能性もあるのでビル内の気圧を保つダンパーの調整は重要である。

空調機からの排気だけを考えるのではなく、ビル全体のバランスを考えた排気の調整が大切なのだ。

2、中性能フイルター

空調機内に中性能フイルターがある空調機はフイルターの目詰まりにも注意したい。排気にはフイルターがないためスムーズに排気ができるが、中性能フイルターの目詰まりにより給気がスムーズにできないということは、この部分だけをみれば負圧になるということでもあるので注意したい。

フイルターの清掃方法だが、フイルター表面に付着している粉塵ならば吸気側を下にして、フイルター枠の周囲をゴムハンマーで軽く叩けば取れるだろう。しかし何年も使っている中性能フイルターならば粉塵が濾材の中に入り込んで叩くだけでは取ることはできない。こうなれば洗浄か交換しかないだろうが、もうひとつ方法がある。それは応急的に中性能フイルターを取外してしまうのだ。

3、プレフィルター

中性能フイルターを取外すとプレフィルターだけになるので、最低でも月に1回はプレフィルターの洗浄をおこないたい。清掃ではなく洗浄するのだ。この場合は上水の水栓から直接洗浄するのではなく、出来れば高圧洗浄機を使いたい。上水の圧力では取れない汚れも高圧洗浄機ならば見違えるように奇麗になるだろう。

上水の使用量も少なくて済み、洗浄時間も大幅に短縮できるので、節水にもなり洗浄作業の負担軽減にもなる。

4、給気量の調整

目詰まりした中性能フイルターを取外すとそれだけ空気抵抗がなくなり空調機からの給気量が増えるはずだ。その結果、室内の給気口で風切音がするようならば給気量の調整もしなければならない。

給気ファンがインバーターによる回転数制御ならば、インバーターの最高周波数を中性能フイルター取外し以前と同程度の給気量になるように調整すればよい。確実に給気ファンの回転数が下がるので省エネ効果は大きいだろう。

回転数が下がればファンの摩擦熱も減り、それだけ外気冷房効果も高くなる。

中性能フイルターを取外すだけで電力と熱の省エネが簡単にできるのだ。これは中間期に限らずに夏季や冬季に行っても構わない。

インバーターの最高周波数だけではなく最低周波数も見直せば空調機運転時間全てにおいて省エネができる。20%回転を落とすことが可能ならばファンの消費電力は50%近くも下がるため大きな省エネ効果が期待できるのだ。

給気ファンがインバーター制御でなければダンパーで調整するしかないが、この場合も給気ファンに対して吐き出し側のダンパーは全開で、吸い込み側のダンパーで調整したほうがよいのは「空調機のチューニングポイント〔其の1〕ダンパー」で説明しているとおりだ。